■斧で顔面ズタズタ、その理由は…「悲恋湖伝説殺人事件」橘川茂

 コミック6巻、7巻に収録、血のように赤くなる悲恋湖の湖畔にあるキャンプ場が舞台となった「悲恋湖伝説殺人事件」。

 犯人の遠野英治も自殺し、最終的には5人の犠牲者が出た凄惨な事件だったが、なかでも殺害された美雪の従兄・橘川茂はその後も含め非常に酷い扱いを受けた被害者だ。

 会員権のかかった悲恋湖モニターツアーに、橘川の代理として参加した一と美雪。キャンプ場に到着すると、刑務所から脱走した死刑囚・通称“殺人鬼ジェイソン”だと思われる犯行によって、次々とツアー参加者たちが死体となって発見されていく。

 美雪に代理を頼んだ橘川はツアーには参加しておらず、この惨状からは逃れていたと思われていた。しかし、会員権をエサに真犯人・遠野英治に呼び出されたのだろう。落ち合った橘川は早速殺され、顔をズタズタにされる。そして、洋服を取り替えられた橘川は、遠野英治の死体役として使われることとなった。

 橘川は、なぜここまで残虐な殺され方をされなければならなかったのだろう。残念ながらその理由はまったくない。犯人・遠野は、先に起きたオリエンタル号の沈没事故によって恋人で実妹の小泉螢子を亡くしていた。そして、同じく乗船していた頭文字S・Kという人物が螢子を死に追いやったことを知る(これも沈みゆく船で起きた緊急避難時の出来事だったためどうしようもなかったことだ)。

 しかし頭文字しか手がかりのない遠野は、その日オリエンタル号に乗船していた頭文字S・K全員を殺してしまえというとんでもない発想を持つ。そして悲恋湖モニターツアーという殺人ツアーを企画し、対象者を次々と殺害していくのだ。“橘川茂(きっかわしげる)”もその一人。橘川はもちろん螢子の死には関係しておらず、とんだとばっちりを受けたことになる。

 加えて事件解決後、橘川は美雪の従兄というそこそこ近しい間柄でありながら、何も触れられなかったのも悲しい。ちなみに、この美雪があまりにも薄情に見えたのだろうか、ドラマ版ではまったく血縁関係のない人物へと設定が変更されていた。

 

 今回は『金田一少年の事件簿』のなかでも、もっとも酷かった事件の被害者3選を紹介してきた。おぞましく凄惨な方法で殺されてしまうのももちろんイヤだが、同時に犯罪トリックや犯人のアリバイとして使われている点がなんともやるせない。

 なかにはあまりの惨状のせいか、のちに作られたアニメや実写ドラマでは演出が変更されたものまであった。名作『金田一少年の事件簿』には、このほかにも多くの凄惨で悲しい事件が多くある。あなたが印象に残っている事件はなんだろうか。

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