『金田一少年の事件簿』おぞましく凄惨だった「もっとも酷かった事件の被害者たち」“魔術列車殺人事件”に“悲恋湖伝説殺人事件”…アニメでは演出変更もの画像
週刊少年マガジンコミックス『金田一少年の事件簿 File16 黒死蝶殺人事件』(講談社)

 原作・天樹征丸氏、金成陽三郎氏、漫画・さとうふみや氏による漫画『金田一少年の事件簿』。1992年より『週刊少年マガジン』(講談社)で連載がはじまり、少年漫画の枠を越えた本格的なミステリーで瞬く間に大人気となった。犯人たちによる緻密で恐ろしい殺害方法はおぞましく凄惨で、読者を恐怖へと陥れたことでも有名だろう。

 そこで今回は『金田一少年の事件簿』のなかでも、もっとも酷かった事件の被害者たちを紹介していく。

■バラバラ…そしてマリオネットのように吊るされた「魔術列車殺人事件」ジェントル山神

 コミックス20巻、21巻に収録された、北海道死骨ヶ原湿原を走る列車・銀流星号と終点駅にある死骨ヶ原ホテルで起きた「魔術列車殺人事件」。のちに主人公・金田一一の宿敵となる高遠遙一が、はじめて“地獄の傀儡師”として引き起こした連続殺人事件である。

 この事件の第一の被害者となった幻想魔術団の現団長・ジェントル山神は、多くの風船とバラが敷き詰められた列車の個室で発見される。しかし、直後噴出してきた煙によって皆が彼から目を離した一瞬のうちに消え、のちに到着した死骨ヶ原ホテルの一室で、天井に吊るされ“ねじれたマリオネット”となって発見された。

 この事件の最大の謎となる、列車での消失トリックのために殺されてしまったジェントル山神。遺体はバラバラ、そして頭部は消失トリックとして使われ、ほかの部位はなんと荷物として送られていた……。

 しかしジェントル山神自体、前団長、そして真犯人・高遠の母・近宮玲子をほかの団員たちと共謀し、殺した過去がある。高遠の恨みを買いトリックのタネとなって殺されることとなったわけだが、因果応報と言うべきか……マジシャンの最期としてなんとも皮肉なものだった。

■3人は爆殺、残った1人は喉を潰され…「墓場島殺人事件」米村チーム

 コミックス19巻、20巻に収録された、太平洋戦争の敗残兵伝説が残る孤島で起きた「墓場島殺人事件」。数年に及ぶ犯人たちの入念な殺人計画……その恨みの深さと執念が感じられ、またその意外な結末に息を呑んだ読者も少なくなかっただろう。

 無人島探検ツアーに参加した一や美雪を含めた不動高校の7人は、そこでサバイバルゲームをしていた大学のサークルチームと出会う。夜にキャンプをしていると大きな爆発があり、一たちが現場に急ぐとサバイバルチームの1つ米村チームの4人が爆弾(アニメでは砲弾)によって爆散し、死亡していた。

 あまりの惨状に4人全員が死んだと思われていたのだが、実は犯人によりリーダーの米村のみ生かされ、喉を潰され監禁されていた。そして、時を見た犯人によって米村は旧日本兵の格好をさせられ、開放される。

 これは犯人の巧妙な作戦だった。極度の近視である米村は、喉を潰されたために声も出せず島を逃げ回るうちに、自分も知らぬ間に島に現れるという“亡霊兵士”の役を演じさせられていたのだ。無人島をほぼ何も見えない状態で、殺人鬼から逃げ回っていた彼の心境はどんなものだったのだろうか……想像しただけでも恐ろしい。そしてその後、役目を終えた米村はやはり犯人によって殺されてしまう。

 今回の真犯人は檜山達之と森下麗美の共犯だった。2人は過去に米村らが起こした火災への報復をおこなったのだ。

 檜山と森下がそれまで住んでいた村を丸ごと焼き払うような大惨事を引き起こしていながら、そこから逃れ、なんの裁きも受けていなかった米山たち。犯行は非常に残虐なものであったが、真相は悲しい復讐劇でもあり、本作においても印象深い事件だった。

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