■ホラーよりシュールな「コックリさん」

 口裂け女と同じく、「コックリさん」も昭和の子どもにとって忘れられない思い出だろう。五十音表と数字、赤い鳥居、“はい・いいえ”が書かれた紙の上に10円玉を置き、それを通して霊と交信する。手順を間違えると取り憑かれるなど、好奇心と恐怖が同時に刺激される遊びだ。

 2014年にアニメ化された遠藤ミドリさんの『繰繰れ!コックリさん』でも、主人公の孤独な少女が一人コックリさんを試み、キツネの物の怪「コックリさん」を呼び出す。しかしこのコックリさん、世話焼きで“オカン”気質なところがあり、少女の生活を心配して取り憑くこととなるのだ。

「コックリ=狐狗狸」だというが、本作でも狐に加えて狗の物の怪「狗神」、化け狸「信楽」が登場。それぞれ人型のときはイケメンに、獣型のときは愛らしいモフモフ姿になって日常コメディを繰り広げるが、時にゾッとするほどシュールな場面が出現する。ホラー要素こそ薄いが、これもこれでリアルに怖い。

■ド直球の下ネタ…「ターボババア」

 最後に「100キロ婆」「ターボばあちゃん」などの名でも知られる「ターボババア」。高速道路や峠などで、車やバイクを猛スピードで追いかけてくる老婆の伝説だ。

 龍幸伸さんの『ダンダダン』では、このターボババアがユーモラスかつスリリングなキャラとして活躍する。なにせ初登場の第一声が「オッパイ吸わせてやるからよお」というド直球の下ネタだ。

 怪異を信じない主人公は「ただのエロいおばあちゃんに遭遇しただけ」と思おうとしたが、結局は呪われてしまう。ただのエロ妖怪ではなく危険な力を持った怪異だが、そのちぐはぐな掛け合わせが良い味を出している。

 霊媒師を祖母に持つギャルと、オカルトマニアの男子高生コンビが体験する怪異バトルを描いた本作は、今年10月にアニメ化が決定している。秋の夜長に、ホラー×下ネタ×バトルの三つ巴が楽しめそうだ。

 

 宜保愛子さんや織田無道さんに沸いた昭和のオカルトブーム。そのなかで生まれた都市伝説たちは、コメディや恋愛など他の要素と掛け合わされ、今なお現代のエンターテインメントとして私たちを楽しませ続けている。昭和世代としては、なかなか嬉しいものだ。

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