『地縛少年花子くん』に『繰繰れ!コックリさん』、『ダンダダン』も…現代版「花子さん」や「メリーさん」は怖くない!? 「昭和の都市伝説」がコミカルにキャラ化されている作品の画像
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

 昭和の夏の定番といえば、テレビで流れる心霊特集だった。そんななか、とくに子どもたちの関心を集めたのが「トイレの花子さん」や「メリーさん」など、ホラー系都市伝説の数々だ。

 これらは今でも多くの人に語り継がれているが、そのうちいくつかはコミカルな新解釈が加えられ、キャラとして新たな命を吹き込まれている。今回は、そんな“現代版・昭和の都市伝説”を題材とした漫画を紹介したい。

■アップデートされた「トイレの花子さん」

 まずは、学校の怪談や七不思議としても有名な「トイレの花子さん」。学校により詳細は異なるが、学校のトイレに潜む少女の霊であり、特定の方法(3回ノックするなど)で呼び出すのは、どこも共通していることだろう。

 多くの場合、花子さんは“おかっぱ頭に赤いスカート”という姿が浸透しているようだが、あいだいろさんによる『地縛少年花子くん』では学ランに学生帽という出で立ちであり、少女ではなく活発な少年の霊として描かれている。また、えすのサカエさんによる『花子と寓話のテラー』でも、花子さんは青いロングヘアの短パン姿で、機械に強くプログラム開発もやってのけるという現代っ子的な特技を持つ。

 前者はホラーとコメディが絶妙に混ざり合った学園モノ、後者は寓話の要素を含んだ探偵モノと、物語のテイストこそ違うが、どちらも昔ながらの花子さんの姿は留めていない点で共通している。

 花子くんが「そーゆーの最近流行らないんだよねー」と言うとおり、外見はおろか“花子=女子”という考えさえも、もう古いのかもしれない。時代に合わせてアップデートされた、まさに現代版花子さんたちだ。

■異世界で魔王を討伐する「メリーさん」

 続いて、捨てたはずの人形が帰ってきて復讐するという「メリーさん」。不気味な電話がかかってきて「私、メリーさん。今、◯◯にいるの」と告げるものだが、電話のたびにその場所が徐々に自分のいる場所へと迫ってきて、最後には「今、あなたの後ろにいるの」となる。

 これを題材にしているのが、原作:佐崎一路さん、漫画:佐保さんによる『あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。』だ。

 メリーさんからの電話を受けるのは、大学進学のため宮城から埼玉に越してきた大学生。しかし宮城からはるばる鈍行で訪ねてきたメリーさんは、なぜか異世界に飛ばされてしまい、主人公が電話越しにアドバイスしながら魔王討伐を目指すことになる。

 異世界ファンタジーは現代のトレンドではあるが、最初に電話がかかってきたとき主人公が考えたことが「捨てたゴミから個人情報を特定された」だったことも、いかにも現代らしいではないか。たしかに、今の世では怪異より情報漏洩のほうが怖いかもしれない。

■キュートなツンデレ「口裂け女」

 次に、昭和の大ブームとなった「口裂け女」。マスクをつけた女性が通行人に「私、きれい?」と尋ね、答えようによっては殺されるというものだ。女性のマスクの下は口が耳まで裂けており、その原因や回避方法についても数々の逸話がささやかれた。

 全国の子どもにとって恐怖の象徴だった口裂け女だが、梶本あかりさんによる『口が裂けても君には』では、許嫁と同棲するキュートなツンデレ女子として描かれている。

 人の噂から生まれた口裂け女は、噂が薄まれば力も弱まり、いずれ消滅してしまう。それを避けるため、代々逸話の管理をする人間の一族に嫁ぎ、力を取り戻そうとする……というストーリーだ。

 昭和時代に一世を風靡した口裂け女の“今”が、まさか人間と婚約してラブコメな日常を送っていようとは……当時の子どもたちには想像もつくまい。

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