■「ムキムキ筋肉」に「いいかげん」キャラも? 90年代以降の「少佐」キャラ
時代が進んで1990年代に入ると、カプコンの格闘ゲーム『ストリートファイターII』(1991年より稼働)のガイル少佐のようなムキムキなキャラが登場。
アメリカ向けメディアでは、ケンたちと同様に主役級の扱いを受けたガイルだが、1994年公開のハリウッド映画『ストリートファイター』では、主役を担うとともに大佐に昇進している。
また、この頃はライトノベルも人気で、「少佐キャラ=カッコいい」の見解もかたちを変えていく。なかでも、吉岡平さん原作の『宇宙一の無責任男』シリーズがテレビアニメ化した『無責任艦長タイラー』(1993年放送)では、“いいかげん”な主人公、ジャスティー・ウエキ・タイラーが少佐設定になっている。
漫画のほうでも、平野耕太さんが描く吸血鬼バトル『HELLSING』(1997年連載開始)には、ドイツ将校の「少佐」(本名不明)が登場。背の低い肥満体で射撃が下手な軍人だったが、その思想と演説は多くのファンを魅了した。
こうして「少佐」という肩書きは、それまでのイケメンで強キャラという“完璧”な存在から、個性的なキャラクターへと裾野を広げていったのである。
そして2000年以降は、小説投稿サイトの台頭もあって、階級が登場する創作小説が多数誕生。異例のスピード昇進を遂げる作品も多く、「少佐」が単なる通過点にすぎないケースも目立った。
そんななかでも、カルロ・ゼンさんが綴る重厚なライトノベル『幼女戦記』の主人公、ターニャ・フォン・デグレチャフは、第二〇三航空魔導大隊の設立時は「少佐」の階級だった。
このように時代の流れとともに、かつての「少佐」のイメージや扱い方も変わりつつある。あらためて過去の「少佐キャラ」を振り返ってみると、「少佐」という階級は創作物のキャラクターとして都合の良い立ち位置であるようにも感じられた。
作品の色にもよるが、例えば尉官キャラだと、将官のような階級がはるか上の偉い人とのつながりが生まれづらく、逆に将官キャラだと尉官のような若いキャラとの絡みが生まれにくいといった傾向はありそうだ。
その点、「少佐」くらいの中間の立ち位置なら、尉官、将官のどちらとも接点が作りやすい……といった側面もあったのかもしれない。
いずれにせよ、かつては「少佐キャラ」が多くの読者や視聴者を魅了したのは間違いない。いまだに「少佐」の響きを聞くだけで、胸をときめかせる人は少なからずいることだろう。