鳥山明さんによる『ドラゴンボール』(集英社)には数多くのキャラが登場し、大迫力のバトルを繰り広げる。そこが魅力のひとつであり、次々と強敵が現れるから面白い。
悟空たちが常に挑戦者という形になり、仲間と協力して敵を倒していく。そこに胸熱な展開がいくつもあるが、パワーインフレが起こってしまい、少しずつ仲間が悟空についていけなくなってしまう。
しかしそんな中でも、クリリンは必死に食らいついて悟空の盟友と呼べるほどの力を身につけていた。そこには戦闘力を超えた戦術や発想力があるからこそ、戦い抜くことができたともいえる。
そこで今回は、ピッコロやベジータも認めるクリリンが見せたセンスあふれる戦闘術を紹介していきたい。
■気円斬や太陽拳で見せたトリッキーな技使い
まずはクリリンの多彩な技の使用から見ていこう。クリリンは作中でも「技のデパート」と思えるほど、いろんな技を繰り出して読者を沸かせている。
最初はかめはめ波しか打てなかったのに、マジュニア(ピッコロ)との天下一武道会での戦いでは舞空術を披露。栽培マンとの戦いでは、戦闘力を凝縮させた気功波を放ち、それを花火のように散らして敵全員に攻撃を仕掛けた。これだけでも他のキャラにはない技の成長が見て分かる。
中でも圧巻だったのがナッパとの戦いだ。ナッパはどんな攻撃も通用しないので、仲間が次々とやられていき、ピッコロも悟飯もどのように対応していいのか分からくなってしまう。しかしクリリンは違った。
自身の開発した技である気円斬をナッパに向けて放ったクリリン。速さも強さも無さそうなこの技にナッパも油断し、「くだらん技だ!」と真正面から受け止めようとする。が……それを見ていたベジータは「ナッパよけろーーっ!!!」と叫んだ。
ベジータの声に反応したナッパがすかさず避けると、後ろの巨大な岩山が切断される。もし、ナッパが避けなければそれと同じ状態となっていたというわけだ。これまでとは違う、切れる気功波を考えたのはかなり斬新だった。
他にもドドリアに追跡されている時に見せた太陽拳。これは天津飯の技だが、クリリンは自分の技にも取り入れていた。それによって、明らかに敵わないであろうドドリアから逃げ切れたのだ。
こうしたクリリンの戦いぶりからは、戦闘力が低いなりの戦い方があったり、技の使い方で展開が変わったりするのがよく分かった。
■リクーム戦で見せた咄嗟の発想力
クリリンは、戦闘中にすぐれた発想力を見せる場面もある。初めて戦う敵と対峙する時は、相手がどんな技を使うかなど分からない。それでもクリリンは相手の技や戦い方を分析して、自分のできることをしようと必死に頑張るのだ。
例えば、リクーム戦ではベジータが唯一の頼みの綱だったが、あのベジータですら歯が立たない。リクームはベジータを追い詰めたすえに、リクームイレイザーガンという大技でとどめを刺そうとしていた。
そこでクリリンは少々手荒な手段に出る。リクームイレイザーガンは口から放つ気功波なので、口を閉じさせれば良い……。そう判断し、リクームの頭上に両膝蹴りを食らわして無理やり閉じさせた。
それによってリクームは、歯が折れ口から流血するという怪我を負ってしまう。この奇襲には「遠慮しないで どんどん ひきょうな手を使うんだよ」と話していたリクームも、かなり頭にきたようだった。
どんな形であれ、敵わないと思われたリクームに一泡吹かせる形となったので、ここでのクリリンの功績はかなり大きいだろう。