■インフレ具合がむしろ心地良い!? 『ゲームセンターあらし』

 ファミコンのみならず、ゲームをテーマに扱う漫画には、ゲームを利用して世を乱そうとする“悪の組織”の登場が鉄板となっているのだが、ときには「そんなものまで!?」と驚いてしまう、とんでもない敵役が登場することも珍しくはない。

 1979年から1983年まで『月刊コロコロコミック』(小学館)にて連載が開始された、すがやみつるさんの『ゲームセンターあらし』には、“悪党”の一言では片付けきれないなんともインパクト大な敵キャラが多数登場した。

 本作は主人公の小学生・石野あらしが、身に着けた数々の“必殺技”を用いて立ちはだかる敵を撃破していく、熱血ゲーム漫画だ。破天荒な技の数々もさることながら、やはり注目してしまうのは物語が進むごとに過激になっていく敵キャラの面々だろう。

 当初は小悪党や天才少年といった一般的なキャラが多いのだが、雪山で眠りについていた剣士やなぜか背中に翼を持った人間など、徐々にラインナップが破天荒なものになっていく。

 やがてコウモリの翼を持った巨大ムカデや身長数十メートルの巨大な猿など、明らかに“怪物”と呼べる類が登場し、ついには天使や異星人、魔神などという超常的な存在まで飛び出すのだから驚いてしまう。

 異世界や異空間といった設定が当たり前に飛び出すのも本作ならではの点で、この世とあの世の境目すら飛び越え、あらしは数々の“ゲーム対決”に挑んでいく。いわゆる敵キャラの“インフレ”が凄まじい本作だが、それゆえに読者を飽きさせることなく、常にインパクト大な展開を生み出し続けていた。

 のちに続くバトル漫画の大きな“流れ”を確立したともいえる、破天荒極まりないゲーム漫画といえるだろう。

 

 作中に登場する“トンデモ展開”の数々は、ゲーム漫画における醍醐味の一つともなっている。想像のはるか上をいく凄まじい展開の数々は意表をつくと同時に、“ゲーム漫画”ならではの強烈な魅力で読者を作品の世界へと惹きこんでくれていた。

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