■初期から物凄い戦いが展開されていた『ドラゴンボール』

 1984年から連載がはじまった、鳥山明さんの名作『ドラゴンボール』。本作はストーリーが進むにつれ本格的なバトル漫画になり、瞬きの間に繰り広げられる戦闘シーンも多くなった。

 しかし主人公の孫悟空がまだ子ども時代のときから、驚くべきバトルは繰り広げられている。それが天下一武道会で亀仙人扮するジャッキー・チュンと、弟子のクリリンが戦うシーンだ。

 チュンとの戦いで、一度はダウンを取られかけてしまうクリリン。その様子を見たサングラスをかけた司会者は、“さっきの一瞬で何が起こったか分からないので教えてくれ”と頼む。

 そこで2人が説明したのは、驚きの攻防の様子だった。まずはチュンの蹴りをクリリンが避けて顔面にパンチを食らわそうとするも、唾を掛けられたので引っ込める。次はチュンがパンチを繰り出すも、クリリンがハナクソを飛ばしたので引っ込め、お互いに作戦を練ることに……と、ここまでが約0.2秒。

 その後、ジャンケンをしようとチュンに持ちかけられ、“あっちむいてホイ”に引っかかったクリリンに対し、チュンはジャンプをして後ろ蹴りを食らわす。クリリンは1回転してどうにか体勢を立て直しながら着地したが、ダメージが大きく倒れてしまった。この一連の流れを、ほんの一瞬でやり遂げていたのである。

 実は物語序盤からものすごい戦いをしていた『ドラゴンボール』。これだけの戦いができれば、後半に登場する惑星を消し去るほどのバトルに発展するのも納得だ……。

 

 瞬きをする間に、物凄いバトルを展開している少年漫画たち。現実には不可能だが、そのようなバトルがものの1秒間の間におこなわれていることを考えるだけでも楽しい。

 こうしたバトルシーンは読者の心を掴み、勇気や希望を与え、想像力をかき立ててくれる。少年漫画の魅力は、まさにこうしたシーンにあるのだろう。

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