『ジョジョ』や『ドラえもん』も…圧倒的筆力! 真藤順丈、東山彰良、辻村深月…直木賞作家が手がけた「人気漫画・アニメのノベライズ」の画像
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 重厚な読み応えによって多くの読者を魅了する“直木賞作家”たちだが、彼らの手によってノベライズされた、漫画原作の小説があることをご存じだろうか。直木賞作家たちの卓越した筆力によって作り上げられた、人気漫画とのコラボ作品たちについて見ていこう。

■“スタンド”の原点に迫る新たな“冒険”の物語…『ジョジョの奇妙な冒険』真藤順丈

 1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載がはじまり、令和の今もなお掲載誌を変え、新たな物語が描かれ続けている『ジョジョの奇妙な冒険』は、漫画家・荒木飛呂彦さんを象徴する作品だ。

 能力バトル漫画でありながら、ホラーやサスペンスの要素を盛り込んだ独特のテイストが魅力で、部ごとに舞台となる国、年代、主人公が変わるのも特徴である。

 その凄まじい人気から幾度となくスピンオフ作品が展開されてきたが、とある“直木賞作家”とのコラボ小説が掲載され、話題を呼んだ。

 その作家とは、『宝島』で第160回直木三十五賞を受賞した真藤順丈さんである。真藤さんは2022年に刊行された『JOJO magazine』(集英社)のなかで、『ジョジョの奇妙な冒険 無限の王』と題された作品を2023年まで連載することとなった。

 本作は1973年のグアテマラを舞台に、謎の“連続殺人事件”を経て人間を超越した、とある“力”の存在が明らかになっていく。原作でもおなじみの組織・スピードワゴン財団が物語に大きく絡んでくるのだが、本作の主人公として活躍するのはなんと第2部に登場した“波紋使い”の女性・リサリサ。彼女は身に着けた波紋の力を用いて、新たな脅威へと立ち向かっていく。

 本作の見どころといえば、作中に登場する謎の“力”……のちに原作で“スタンド能力”とされる力の起源に迫るというその興味深い内容だろう。原作同様の冒険活劇でありながら、同時に原作で語られなかった“影の歴史”を紐解くことができる、実に奥深い一作だ。

 もちろん、漫画同様の波紋を駆使したバトルや、キャラクター同士の巧妙な心理戦も健在。舞台となる中南米のどこかダークな雰囲気や、そこで起こる壮絶な事件の数々を、真藤さんの卓越した筆力が見事に表現し、読者を惹きこんでしまう。

 第2部、3部の狭間を独自の作風で描き切った、実に“奇妙”な一作といえるだろう。

■“伝説の三忍”が残した熱き思いの数々…『NARUTOーナルトー』東山彰良

 1999年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、岸本斉史さんの『NARUTOーナルトー』は、個性的な能力を持つ“忍”たちが活躍する大人気バトル漫画だ。

 日本古来の“忍”という存在に独自のテイストを加え、ジャンプ作品の“友情”、“努力”、“勝利”の3軸に根ざした展開を描いた作品で、その人気の高さから今もなお後継作やメディア展開が続いている。

 そんな本作だが、2015年に小説『流』で第153回直木三十五賞を受賞した作家・東山彰良さんの手によって、『NARUTOーナルトー ド根性忍伝』なるスピンオフ作品が生み出されることとなった。

 この作品、原作漫画を読んでいるファンにとっては、どこか聞き覚えのあるタイトルかもしれない。そう、実は本作、“伝説の三忍”の一人・自来也が作中で手掛けた小説を再現し、書き上げられたものなのだ。

 原作漫画では主人公・ナルトが本作を手に取り涙するシーンがあるのだが、架空の忍者たちが繰り広げる戦いを通じ、戦争と平和、忍者の正しい立ち位置といった数々の道徳的なテーマを読者に問いかける一作となっている。

 作中では名著として登場するが、小説の主人公である架空の忍者の名が主人公・ナルトの名前の由来となっているなど、多くの“忍”の人生を動かした非常に重要な作品なのだろう。

 作中には原作漫画のキャラやシーンがモチーフとなったであろう設定も多く登場し、ファンであれば思わずニヤリとしてしまう場面も多い。原作でナルトたちに多くのことを教え遺した自来也の意思を、東山さんの持つ筆力が見事に具現化した一冊といえるだろう。

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