兄シャア・アズナブルの死を望んでいた?『機動戦士ガンダム』のキーパーソン、セイラ・マス「一年戦争後の動向」を追うの画像
『GUNDAM HISTORICA 06』(講談社)

 初代『機動戦士ガンダム』のヒロインの一人、セイラ・マス。彼女は、本名をアルテイシア・ソム・ダイクンといい、“ジオニズム”の提唱者のジオン・ズム・ダイクンの娘だ。つまり、“赤い彗星”ことシャア・アズナブル=キャスバル・レム・ダイクンの実の妹となる。

 宇宙世紀0079年(U.C.0079)、一年戦争では避難民としてホワイトベースに乗船するも、医療スタッフの補助や通信担当、そして途中からはパイロットとしても活躍する。さらに実兄・シャアとの関係もあり、初代『ガンダム』では重要なキャラとして出番も非常に多かった。

 しかしその一方、その後のシリーズにおいてセイラは登場回数が少なく、影を潜めていった。一年戦争後、セイラ・マスはいったいどこで何をしていたのだろう。

■【一年戦争直後】戦災孤児の支援、さらにポロに興じる姿も

 一年戦争直後(U.C.0083)のセイラの様子は、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(原案・矢立肇氏、富野由悠季氏、漫画・安彦良和氏)24巻に収録されている外伝『アルテイシア0083』で描かれている。

 まず前提として、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、一年戦争の最終戦ア・バオア・クーの戦いにて、セイラはジオン軍の捕虜になるというオリジナル展開があったことを押さえておかなければならないだろう。

 その際、セイラは自身がジオン・ズム・ダイクンの娘であることを明かしており、その名を聞いたジオン兵が彼女のもとに集まり、セイラは彼らを率いてキシリア派と戦っていた。

 おそらくそのことも大きく関係していたのだろう。一年戦争後、重要人物となってしまったセイラはイギリスの貴族の屋敷に匿われており、この外伝ではそのセイラのもとへ訪れたカイ・シデンの視点で物語が進んでいく。

 彼女は戦災孤児の支援を行う「アストライア財団」を運営し、屋敷の主であるレディ・バーリーが「彼女こそ本当の貴族だわ」と讃えるほど、セイラは気高く強い女性となっていた。

 また物語終盤、ア・バオア・クーでセイラの下で戦った元ジオン兵のテロリストたちが、セイラを再度担ぎあげようと現れ、治安当局と一触即発の状態になる事態に陥るも、セイラはあくまで気丈に振る舞う。そして、レディ・バーリーがポロ(馬に乗り球を打ち合い、相手ゴールに運ぶ競技)で勝負をつけることを提案すると、セイラはこれでも大活躍。そして彼女は、テロリスト並びに治安当局を平和的に追い払ってみせた。

 クライマックスでセイラは、一年戦争時ホワイトベースに潜入し不遇の死を遂げたミハル・ラトキエ、その弟・ジルと妹ミリーも財団で見守っていることをカイに伝える。ずっとそのことが気がかりだったカイは思わず涙を流し、そして何かを決意する。セイラはカイの人生を大きく変えるきっかけとなるのだった。

■【グリプス戦役】兄の演説を憂いの表情で見る姿が…

 初代の続編にあたるアニメ『機動戦士Zガンダム』のグリプス戦役(U.C.0087)でもセイラは登場するが、その出番は非常に少ない。

 第37話「ダカールの日」にて。ダカールでおこなわれていた地球連邦政府議会を占拠し、登壇したクワトロ・バジーナ。彼は自身がかつてシャア・アズナブルと呼ばれていた男であること、さらにジオン・ズム・ダイクンの子、キャスバル・レム・ダイクンであることを明かしてまで、地球連邦の議員や市民に向かってティターンズの横暴を暴露する演説をおこなう。

 一方、海近くの別荘で、そのシャアのテレビ中継をどこか悲しい表情で見るセイラの姿があった。ちなみに、この際のセイラは台詞がいっさいなくその心中まではわからない。しかし、のちに発売されたPS用ゲーム『機動戦士Zガンダム』のムービーにおいて、彼女の台詞が追加されている。そこでは、兄はまだ戦いのなかに身を置きたがっていると嘆き、さらには、自身の手で兄を殺さねばならないのかもしれないと、揺れる想いを語っていた。

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