■サスケの闇落ちを許してしまう『NARUTO』サスケ奪還任務編
最後は『NARUTO-ナルト-』(岸本斉史さん)から、「サスケ奪還任務編」での主人公・うずまきナルトの衝撃の負けを紹介したい。
里を抜け、音の四人衆とともに大蛇丸の元へと向かうサスケ。それを食い止めようとする木ノ葉の仲間、さらには我愛羅たち砂隠れの忍の協力によって、ついにナルトとサスケの直接対決となった。
終末の谷でおこなわれた、かつての第七班同士の戦いは激しさを極める。サクラの願いとともに「オレにとっちゃ… やっとできた繋がりなんだ」と必死に説得するナルトだったが、「だったらその繋がりをオレは断ち切るまでだ!」とあくまで冷淡に切り捨てるサスケ。
写輪眼と呪印の力の前に歯が立たないナルトは九尾チャクラを使い、そしてサスケも禁断の力・“呪印状態2”に手を染める。そして、異形の姿の戦いは“螺旋丸”と“千鳥”の激突によってようやく決着がつくのだった。
戦いに敗れ、気を失ったナルト。カカシがその場に着いた頃には、サスケは自身の額当てを残し姿を消していた。主人公のまさかの敗北にライバルであり友であるサスケの闇堕ちと、読者には衝撃的な展開となった。
この後、ナルトは自来也とともに修行の旅へ出て、木ノ葉に帰還後、サスケと再会。そして、時を経て因縁の場所・終末の谷での最終バトルへとつながっていくのであった。
「サスケ奪還任務編」での“負け”があったからこそ、その後の最終決着は非常に感動的なものとなったのは間違いない。
今回は、主人公が負ける衝撃の展開を紹介してきた。主人公たちは負けて悔し涙を飲むのだが、必ずそこから立ち上がりさらなるパワーアップと成長を見せてくれた。そして負けに対しての衝撃が大きかったぶん、読者もその様子に大いに沸き立ち、物語の虜となっていく。
そういった意味で“負け”とは、漫画の主人公にとっても読者にとっても必要不可欠なのかもしれない。