■「人間製造機」に「かげがり」…意外に怖い話が多い原作の『ドラえもん』
『ドラえもん』では、オカルト的な怖さではなく道具の使い方を誤ったがために起こる恐怖展開が多い。印象的なのが「人間製造機」のエピソード。原作コミックスにも掲載されており、過去に2度に渡ってアニメが放送されている(2009年には「「大あばれ!のび太の赤ちゃん」というタイトルで放送)。
「人間を作る」というこの道具には超能力を使う凶暴なミュータントが誕生するバグがあり、未来では彼らが暴走する大事件が起こったため販売中止となっていた。材料が鉛筆やマッチなどの身近な物で代用可能なのも怖いが、「そもそもなぜ人間を作る道具が?」と根本的なところから恐怖を感じる。
ドラえもんが返品のために出しておくと、のび太が例のごとくいたずらし、ミュータントを作ってしまう。生まれたミュータントは旧作のアニメでは緑色の肌をした赤ちゃんのような見た目で、ドラえもんを殴ったりしずかちゃんを超能力で殺そうとしたりと大暴れし、のび太は震え上がってしまう。逆再生時計で時を戻して事なきを得るが、「人外の者が人間を追い詰める」という設定はいつの時代もゾクゾクしてしまう。
「かげがり」も、インパクトが強いストーリーだった。ある日、パパに頼まれた草むしりをサボるためにドラえもんを頼ったのび太。ドラえもんは「かげきりばさみ」を出し、30分限定でのび太の影を切り離した。
この道具は影を切り取って動かせる便利なものだが、時間内に本体に戻さないと自我を持ち始め、最終的には乗っ取られてしまうという危険をはらんでいる。が、のび太は約束の時間を超えて影を小間使いしてしまう。
真っ黒だった影は次第にのび太の容姿になって言葉を話しだし、「モウスグイレカワレルゾ。」と恐ろしい発言をする。ドラえもんは機転を利かし、ママの影にのび太の影を捕まえてもらうのだった。
浸食されて段々と黒くなっていくのび太本体がジワジワと恐怖感を煽ったこのエピソード。雨が降っていてママの影が作れなかったらどうなっていたのかと考えると恐ろしい。影が濃くなっていく、夏にピッタリのホラー回だ。
国民的アニメは通常回がほんわかしているからこそ、時折描かれるホラーエピソードのインパクトが強くなる。どの回もBGMや色調をダークに変えてオチまでしっかり作り込んでいるため、いつもとは違う緊張感とゾクゾク感が味わえるものばかりだ。