■改めて読み返すとギャップを感じる柱たちの言動

 この頃は、すでに作中に登場している水柱・冨岡義勇以外の柱にはほぼ一言しかセリフがなく、キャラの詳細を掴むにはあまりに短い登場シーンだった。

 次に発言したのは恋柱・甘露寺蜜瑠。「えぇぇ… こんな可愛い子を殺してしまうなんて 胸が痛むわ 苦しいわ」とほおを赤らめ、なぜかこの後も全ての人にキュンキュンと胸をときめかせていた。

 甘露寺は実は天真爛漫なキャラクターだが、この時点では恥ずかしがり屋で内気なキャラのようにも思える。

 岩柱の悲鳴嶼行冥は「あぁ… なんというみすぼらしい子供だ 可哀想に 生まれて来たこと自体が可哀想だ」と涙を流して手を合わせている。その見た目は巨体に白目も相まって、とにかく怖い。

 霞柱の時透無一郎は皆が口々に炭治郎への処遇を発言する中、ずっとボーッと空を見上げていた。「刀鍛冶の里編」で明らかになるが、このときの彼は記憶喪失状態であり、思考も頭に霞がかかったようになっていたのだ。

 悲鳴嶼、煉獄、宇髄の3人の中で「殺してやろう」と意見が一致してしまう中、木の上にいた蛇柱・伊黒小芭内は冨岡に対してネチネチと嫌味を言っている。

 蟲柱の胡蝶は炭治郎に優しく声をかけ、ことの顛末を説明させようとしていた。鎮痛薬入りの水を与えてやるなど、このときから優しさは健在のようだ。

 禰󠄀豆子の入った箱を持って現れた風柱・不死川実弥は特に凶暴で、箱の外から禰󠄀豆子を刃で貫くという残虐な行動まで。

 小芭内、蜜璃、不死川の3人に関しては、「柱稽古編」を終えた今もそれほどギャップがないだろう。しかしこの時点の柱たちは見た目もそれぞれ個性的で、ヤバイ人たちばかりの異色集団に思える。「柱稽古編」の柱合会議ではみなピシッと正座で集まって落ち着いて話をしているのが不思議なくらいだ。

 逆に、冨岡は一悶着はありつつも初登場時点で禰󠄀豆子を殺さず、炭治郎に鱗滝左近次を紹介するなど初登場の印象はかなり良かった。しかし「柱稽古編」まで見ていると、普段からあまりに言葉が足りておらず、周りの人を意図せず怒らせたりと、コミュニケーション力に問題がありすぎなことがわかる。クールという言葉ではとてもカバーできない。

 話の展開が進んでいくにつれて、冨岡と他の柱の印象をそれぞれ真逆に感じるのはなかなかに興味深いことかもしれない。

 柱の性格が初めての柱合会議のままだったら、ここまでそれぞれのキャラクターに人気は出なかったように思う。それもひとえに炭治郎の頑張りがあったためだろう。

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