臼井儀人さん原作の漫画をもとにした国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』に登場するしんのすけの父・野原ひろしは、秋田県大仙市(旧:大曲市)出身の35歳。双葉商事営業部の係長で、野原家の大黒柱だ。
妻・みさえを愛し、長男のしんのすけと長女のひまわりと過ごす時間を大切にするその姿から、『たまひよ』の好きなパパランキング〈アニメ・漫画部門〉では3年連続1位になり2023年見事殿堂入りを果たすなど、理想のパパキャラでもある。
そんなひろしだが、映画では毎回子育て世代に刺さる名言を残すことでも知られている。そこで今回は、映画『クレヨンしんちゃん』から泣ける野原ひろしの名言を厳選して3つ紹介したい。
■「オレは家族と一緒に未来を生きる」『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』
ファンの間では、クレヨンしんちゃんの最高傑作と推す人も多い、2001年公開の『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』。
1970年に開催された大阪万博を彷彿とさせるシーンからはじまる本作は、21世紀の日本を憂い、まだ人々が心を持って生きていた20世紀への逆戻りを企てる「イエスタディ・ワンスモア」と、それを阻止しようとする野原一家の奮闘が描かれた。
物語冒頭、大人たちは“懐かしい匂い”により、まるで催眠術にかかったかのように幼児退行していく。ひろしやみさえも例外ではなく、しんのすけとひまわりがまだ部屋にいるにもかかわらず電気を消して寝てしまうシーンなどは非常に怖かった。そしてその後も、中盤まで敵の手先として動くひろしとみさえの姿が見られた。
そんなひろしは、しんのすけから自身の靴を脱がされ、その靴の匂いを嗅ぐことで我に返る。ひろしの“臭い靴の匂い”は、夫として父として“今”を懸命に生きている証であったのだ。
我に返ったひろしとみさえ、しんのすけとひまわり、そしてシロは、“懐かしい匂い”を日本中に散布を阻止しようとする「イエスタディ・ワンスモア」の計画をなんとか阻止しようとする。
「イエスタディ・ワンスモア」のリーダーであるケンの「戻る気はないか?」という最後通告に対しても、ひろしは「ない!」と即答。続けて発した「オレは家族と一緒に未来を生きる」という言葉は、本作を象徴するような名言となった。
ケンの理想とするように、“懐かしい匂い”を嗅げば20世紀という夢の中で一生幸せに暮らせたかもしれない。しかし、ひろしはそんな夢の中ではなく、家族とともに生きる未来を選んだのだった。ひろしの家族への愛が感じられる一言だった。
■「子どもが俺たちの戦うエネルギーだろ!」『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』
映画シリーズとしては初めてひろしがメインとなった、2014年公開の『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』。
本作最大の特徴は、2人の“とーちゃん”が登場することだろう。一人目はもちろん野原ひろし、そして2人目はひろしの記憶と意識をコピーしたロボットの“ロボとーちゃん”だ。
ロボとなって帰ってきたひろし。序盤こそみさえの戸惑いもあったが、建築現場のクレーンから落ちる子どもたちを救う活躍などもあり、徐々に本物の“野原ひろし”として受け入れられていったロボとーちゃん。
しかし本物の野原ひろしは、日本の父親たちの復権を目論む組織「父ゆれ同盟」に捕らえられており、ロボとーちゃんが記憶と意識をコピーしただけのロボットだったとわかる展開は衝撃的だった。自分がコピーであることを受け入れられず、“野原ひろし”であろうとするロボとーちゃんの姿は本当に切ない。
クライマックスでは、それまで互いの存在を受け入れられなかったひろしとロボとーちゃんが手を組み、さらに野原一家のみんなで「父ゆれ同盟」黒幕・黒岩仁太郎と対決。
“巨大五木ロボット”相手に大ピンチに落ちいり、一人で戦おうとするロボとーちゃんに対してもあくまで一緒に戦おうとするしんのすけ。そしてひろしも「子どもが俺たちの戦うエネルギーだろ!」と、全国の親たちの気持ちを代弁するような一言を放つ。
その一言に何かを感じ取ったロボとーちゃん……そしてここからの大逆転へとつながる。体は機械であるロボとーちゃんも、子どもからエネルギーをもらって戦う正真正銘の親だったのだ。そしてラスト、とーちゃんとロボとーちゃんの腕相撲対決は涙なくしては見ることができない。ぜひ感動の展開をその目で確かめてみてほしい。