■創作だけど本作で初めて知った「梁山泊」落ちぶれた豪傑たちが立ち上がる爽快感『水滸伝』
最後は創作小説をもとにした『水滸伝』。1967年から1971年にかけて執筆されており、意外にも横山版歴史漫画のなかでもっとも古い作品だ。
ストーリーはこうだ。政府高官・高俅らを中心に悪政が蔓延していた宋の時代。そんななか、冤罪などで世間からはみ出しものとなった108人の英雄が梁山泊に集って反乱軍を率い、悪徳政府を打ちのめすというものである。
全8巻で描かれているが、登場人物が多いため、主役が宋江ということになかなか気づけず、最初にカッコよく登場した史進が最後にあっけなく死んでしまうことにも驚いた。宋江・林冲・魯智深・花栄・一清道人・呉用あたりは覚えていたが、読み始めた当初は林冲を主役として見ていたものだったな。
そういえば本作には、旅人に毒を盛る酒屋(小料理屋のようなもの)がよく登場していた。怖すぎだが、広大な中国大陸を移動するとき喉の渇きを潤すにはお酒が一番らしく、伝令・密偵になりやすかった神行法の術を使う戴宗も狙われていたものである。
横山歴史漫画は、筆者にとってバイブル的存在だ。中国史以外もかなり読みこんだものである。上記で紹介した『項羽と劉邦』はとても面白い名作なのだが、『キングダム』のファンからすると、始皇帝(嬴政)の存在に驚くのは間違いないだろう。そして、『キングダム』では柔和な印象の趙高とはまったく違う姿にビックリするだろうな。