鳥山明さんの『ドラゴンボール』に登場するラディッツは、悟空の実の兄でありサイヤ人の戦士だ。彼は初登場時にはとんでもない力を持っており、悟空とピッコロが手を組んでようやく撃退できた強敵だった。
だが、ラディッツについてはナッパが「よわむしラディッツ」と話すように、その後のインフレしていく『ドラゴンボール』の世界では虫けら程度の実力だ。悟空の実の兄であるにも関わらず、なぜそんなにも弱かったのかと改めて振り返ると謎ですらある。
まるで宇宙が膨張していくように戦闘力が増して行った悟空の戦い。その点で見るとラディッツは確かに弱いかもしれないが、そこには理由もある気がする。そこで今回は、なぜラディッツが弟の悟空とは違い戦闘力が伸びなかったのかを探っていきたい。
■サイヤ人の平均戦闘力はそれほど高くない
戦闘民族と呼ばれるサイヤ人だが、基本的にはそれほど戦闘力は高くない。一部のエリートを除いた平均的な数値としては1000〜2000といったところだろう。
フリーザは通常形態で53万という圧倒的な戦闘力を持ち、側近であるザーボンやドドリアも2万超えの戦闘力。ギニュー特戦隊に至っては、ギニューは12万とフリーザ以外のキャラと比べてもダントツの力を持つ。
それに比べてサイヤ人の中でもエリートとされるベジータの初期戦闘力は、1万8000とかなり低い。フリーザの従順な部下のキュイと同等の力を持っていたので、そんなものか……と驚いてしまったほどだ。そこから見てもサイヤ人は他の宇宙人と比べても強いとは思えないのだ。
ラディッツの戦闘力については原作では明言されていないが、『DRAGON BALL大全集』などで1500となっている。つまり平均的なサイヤ人の戦闘力といえるだろう。
一方の悟空は、生まれながらに戦闘力が高いわけではない。両親も普通のサイヤ人だったので、普通に育ったとしたらラディッツと変わらない戦闘力になっていただろう。
悟空の息子である悟飯は4歳にして最大戦闘力1307とラディッツを上回っていたが、それもサイヤ人の父と地球人の母をもつ異例の存在だからだ。そこからもラディッツが明らかに弱いということにはならない。
■育った環境の違い
次は悟空とラディッツの育った環境という点で見ていきたい。悟空は地球での生活を通して、自分を鍛えるのが当たり前になっていた。そこからサイヤ人としての力を最大限に解放するのに繋がったのかもしれない。
ラディッツもナッパもベジータもおそらく、これまでにじっくりとトレーニングをしなかったと思われる。戦闘民族ゆえに幼い頃から戦いの連続だった彼らに、そんな時間はなかっただろう。
地球は平和な星でもあるので、鍛錬するにはもってこいだが、サイヤ人は常に戦いに駆り出されるような忙しい状況。つまりのんびり自分を鍛えられるような環境にはなかったのだ。
ベジータも悟空に敗れて強さの秘密を知ってから、自らに負荷を掛ける重力トレーニングを積極的におこなっている。おかげでそれ以前よりも戦闘力が急激に跳ね上がり、超サイヤ人にもなれた。
つまり自分を追い込むようなトレーニングができる環境だったとしたら、サイヤ人はどんどん強くなれる可能性があるというわけだ。ブロリーが良い例のような気もする……。