■「恥じるな 生きてる奴が勝ちなんだ 機会を見誤るんじゃない」

 宇髄は一見すると自己中心的な人物に思えてしまうかもしれないが、そうではない。誰よりも仲間や家族を大事にするあたたかい心の持ち主でもある。それが分かるのが、遊郭に現れる鬼が上弦の鬼である可能性が浮上した時だ。

 だとすると炭治郎たちには手に負えないと判断した宇髄は、彼らにすぐ帰るよう命じる。それでも炭治郎が残ろうとすると、「恥じるな 生きてる奴が勝ちなんだ 機会を見誤るんじゃない」という言葉で返すのだ。

 このセリフには炭治郎たちに無駄死にしてほしくない、いつかお前が活躍できる場面がある、という気持ちがあらわれていると思った。柱としての責任もそうだが、何よりも仲間の身を案じているのがカッコいい。

 普通なら「命を落とす覚悟で敵に向かっていけ!」と言っても良さそうな場面でこのセリフが出てくることからも、宇髄の人の良さがうかがえる。

■「『譜面』が完成した!!! 勝ちに行くぞォオ!!!」

 最後は「遊郭編」で最も盛り上がる場面での一言だ。炭治郎は善逸や伊之助と協力し、強敵である妓夫太郎や堕姫を少しずつ追い詰める。

 しかし、「ふたりの頚を同時に落とさなければ倒せない」という難易度の高さに全員がボロボロ。しかも頼みの綱の宇髄は左手を失い、毒によって倒れてしまう。そんな絶望的な状況でも炭治郎は決して諦めず、妓夫太郎の頚を落とすまであと一歩のところまで迫った。だが……切り落とす力はもう残っていない。

 その後妓夫太郎が反撃を繰り出したとき、突如炭治郎の前に飛び出してきたのが宇髄だ。彼は炭治郎を奮い立たせるため、「『譜面』が完成した!!! 勝ちに行くぞォオ!!!」と不敵な笑みを浮かべながら叫ぶ。実は宇髄は筋肉で心臓を止めることで、毒が回るのを一時的におさえて最後の攻撃に備えていたのだ。

 これによって炭治郎は踏ん張って、宇髄とともに怒涛の攻撃を仕掛け、妓夫太郎の頚を切り落とすのに成功。激闘のすえ、ついに勝利をおさめることができたのだ。このシーンは鳥肌モノで、思わず拳を握りしめながら見守ってしまった。宇髄という人間の真髄がここに詰まっているともいえるだろう……。

 

 宇髄天元が口にする名言には、パワーがみなぎるようなものが多い。皆を奮い立たせる彼の言葉は、現実でも逆境の時に送ってもらえたら嬉しいかもしれない。日常生活を送る上でも心に留めておきたいものだ。

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