吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』(集英社)は、2024年5月から「柱稽古編」が放送されており、いまだに人気が衰えることがない。バトルシーンはもちろん、人間ドラマとしての魅力にあふれる本作では、人間と鬼それぞれに名言が存在して、共感できるものや心に響くものがたくさんある。
その中から今回注目したいのが、音柱である宇髄天元の名言。「遊郭編」で炭治郎たちに大きな影響を与えた柱であり、たびたびカッコいい姿を見せてくれた彼の名言の数々を、あらためて振り返ってみよう。
■「派手を司る神…祭りの神だ」
まずは、宇髄といえばこのセリフといえるものから紹介したい。それが「派手を司る神…祭りの神だ」という、自らをあらわすように口にした言葉である。
宇髄は柱の中でも誰よりも「目立つ」ことを考えている。その見た目からも分かるように、派手さを売りにしているのだ。タイプで言うと炎柱の煉獄杏寿郎と被る部分もあるが、あちらはどちらかといえば天然である。一方の宇髄は、「派手さ」を狙って行動している。
そんな宇髄の特徴は、あらゆる局面でも挫けない心だろう。自らを鼓舞するかのように、あえてド派手な演出や言動をとりながら戦う姿は、他のキャラにはなかなか真似できない。
しかも驚きなのが、そんな性格でありながら忍出身であることだ。派手さを求める忍なんて聞いたことがない……。
それでも実力は十分で、チャラそうに見えるが頼れる存在でもある。炭治郎たちが挫けそうになったところを何度も支えてくれたのも印象的だ。仲間を激励しながら戦う姿は、一緒に戦う側としてはありがたいだろう。
■「俺程度でそう見えるならテメェの人生幸せだな」
次は、十二鬼月のひとり・妓夫太郎との会話の中の一部から。妓夫太郎は自分の生い立ちと比較して、宇髄を「生まれた時から特別な奴」だと決めつけていた。そのため嫉妬にまみれた発言を繰り返すのだが……それに対し、宇髄は「俺程度でそう見えるならテメェの人生幸せだな」とあっさり返す。
たしかに陽気で派手な宇髄を見ていると、何の苦労もしていなさそうだと思ってしまう。しかし実はそうではない。彼なりに努力を重ね、時に悔しい思いをしながらも今の地位を築き上げてきたのだ。
彼は柱として、そして3人の妻の夫として多くの責任を負うために、血のにじむような鍛錬を積んできたのだろう。それは自分が決して才能に恵まれているわけではないと分かっていたからでもある。だからこそ、パッと見の印象だけで判断した妓夫太郎を許せなかったのかもしれない。
現実でも嫉妬によって他人を攻撃する人は少なからずいるので、普段の生活にも使えそうな心に響く言葉である。