■ブラック・ジャックの悲しい過去…
最後に、ブラック・ジャックの過去について紹介しよう。彼の顔や身体にはいくつもの傷があり、ところどころツギハギのようになっている。これは幼いころ、爆発事故に遭ったあとの治療のためについたものだ。
ブラック・ジャックの本名は間黒男。その通り名は、のちにピノコに「ブラックは黒 ジャックは男 黒男だ」と説明している通り、本名を英語に変えたものである。
幼い黒男は母親と一緒に出かけているとき、不発弾の爆発に巻き込まれて瀕死の重体となった。そんな彼の命を救ってくれたのが、のちに恩師と仰ぐ本間丈太郎だ。その当時の手術の痕跡が、ブラック・ジャックの身体に傷跡として残っているのである。髪が半分白いのも、事故の恐怖があまりに大きすぎたためだ。
また、ブラック・ジャックの顔に皮膚の色がほかと異なる部分があるのは、外国人の血を引く同級生のタカシが手術のとき皮膚をゆずってくれたからだ。ブラック・ジャックは彼に対しとても恩を感じており、誰に何と言われようとそのままの顔で生きていくつもりでいる。
ブラック・ジャックという人間の根底にあるのは、この壮絶な経験だ。彼自身もかつては「死にものぐるいでなおそうとする患者」だった過去があり、だからこそ高い治療費で患者を試そうとする。しかしそうした厳しさのなかにも優しさが感じられるのは、自身を救ってくれた本間先生や皮膚をくれたタカシ、そして何より最期まで優しかった母親の愛情が彼を支え続けているからだろう。
こうして振り返ってみると、ブラック・ジャックの複雑かつ魅力的な人間性にあらためて気付かされる。そんな彼を高橋さんが実写版でどう演じてみせるのかとても楽しみだ。ぜひドラマの放送にあわせて、原作漫画も手にとってブラック・ジャックの魅力を味わってみてほしい。