無免許なのはナゼ?高額請求の理由は?実写ドラマ放送前におさらい!今さら聞けない『ブラック・ジャック』の基礎知識の画像
少年チャンピオン・コミックス『ブラック・ジャック』第21巻 (手塚プロダクション)

 手塚治虫さんの名作漫画『ブラック・ジャック』は、6月30日に高橋一生さん主演のスペシャルドラマの放送が控えており、今あらためて注目を集めている。

 本作は作品自体が医療漫画の金字塔として愛されているのはもちろん、主人公であるブラック・ジャックその人もキャラとして非常に有名だ。しかしそれほどの知名度があるからこそ、「実はなんとなくしか知らない」という人も多いのではないだろうか。

 そこで今回は、孤高の医師ブラック・ジャックにまつわる「気になるあれこれ」を紹介したい。作品を読んだことがない人にはもちろん、内容をご存知の人にも、ドラマ放送前のおさらいとして楽しんでいただければ幸いである。

※記事内に出てくる巻数は秋田文庫版のものを指す。

■なぜブラック・ジャックは無免許なのか?

 ブラック・ジャックと聞いてまず思い浮かぶワードは、「無免許」だろう。彼は非常にすぐれた腕の持ち主であり、天才医師として国内外でその名を轟かせているにもかかわらず、医師免許を持っていない。いわゆる「闇医者」である。

 彼ほどの名医がなぜ……と疑問を抱くのは読者だけでなく作中の登場人物も同じで、ブラック・ジャックが免許を持っていない理由をたずねられる場面は少なくない。彼はそのたび「免許なんか持つとやっかいなかかわりができてね」、「肩書きってやつがきらいでねえ」などとクールに答えている。さすが孤高の医師、群れない一匹狼というわけだ。

 しかしそうしたポリシー以外の背景が描かれたエピソードもあった。たとえば11巻収録「けいれん」では、“気胸の手術の際にメスを持つ手が急に痙攣するときがある”というブラック・ジャックの弱点が描かれたのだが、このとき彼は「これで 私がまともに医師免許をとれないことがわかったろう!!」と叫んでいる。とはいえ、紆余曲折のすえに問題が解決してからも相変わらず無免許なので、これはたいした理由ではなさそうだ。

 また6巻収録の「報復」によれば、本作の世界では医師免許をとって日本医師連盟にくわわると、連盟が定めた治療費しか請求できなくなるらしい。ブラックジャック自身が「私は医師連盟で決めた料金なんてばかばかしくて相手にしませんね」と言っている通り、高額請求をしたい彼にとってこの取り決めは邪魔になるのだろう。ちなみに彼が世界各地で患者から大金を巻き上げるせいで世界医師会連盟にまで苦情が殺到しており、そのために免許がおりないというエピソードもあった。

 ……と、ここまでブラック・ジャックが免許を取りたがらない理由について書いてきたが、何も彼は絶対に免許が欲しくないわけではない。10巻収録「ピノコ還る!」では世界医師連盟から医師免許証を与えられることになり、ウキウキとご機嫌な姿も描かれている。結局、この話はピノコ関連の騒動で白紙になってしまうのだが、最後のコマで意気消沈する姿が彼らしくなく、なんだか可哀想だった。

■ブラック・ジャックが高額請求をする理由は?

 さきほど話が出た「高額請求」もブラック・ジャックを語るうえでは欠かせない要素だが、その理由についてはシンプルに説明できる。「患者やその家族の覚悟を確かめるため」だ。

 ブラック・ジャックは自分に手術を依頼した人間に対して法外な治療費を吹っかけ、それに対して相手が文句を言うと「そりゃァ あんたが死ぬほどの苦しみをしていないからですよ」などと軽く流してみせる。

 その姿勢は相手が裕福だろうと貧乏だろうと基本的には変わらない。患者がどんなことをしてでも支払うと宣言するときにみせる、生に対する執着こそが彼にとっては大切なのだ。作中で口にした「わたしは死にものぐるいでなおそうとする患者が好きでねえ」という言葉にも、その考えがあらわれている。

 だからこそブラック・ジャックは、お金を受け取ること自体にはさほど興味がないようだ。場合によっては受け取ったお金を返してあげたり、請求をチャラにしたり、大幅な値下げを申し出たりする。

 ブラック・ジャックがお金そのものに執着しているわけではないのは、彼の普段の暮らしぶりからもうかがえる。贅沢しようと思えばいくらでもできそうなのに、食事や服にお金をかけている様子はまるでない。好物はカレーにお茶づけと実に庶民的だし、診療所兼自宅もかなり古い。もちろん設備や道具を整えるのにお金はかかるだろうが、それにしてもである。

 では稼いだお金は何に使っているのかというと、自然を守るため、美しい自然が残る島や土地を買っているとのこと。あとはピノコを裏口入学させるために札束をポンと出すなど、必要なとき(?)は出費を惜しまない。きっと普段の使い道がなさすぎるからこそ、そういうお金の使い方ができるのだろう……。

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