■造られた命が目覚めたのは…アルビナスの「愛」
ブロックと同じハドラー親衛騎団のひとり、アルビナスも敵ながら胸に染みる活躍を見せた。
本作終盤の舞台となった魔王軍の要塞・バーンパレス最初の戦いは、ハドラー親衛騎団と勇者パーティの総力戦だ。アルビナスはマァムを相手に圧倒しながら、自分が戦う理由を「ハドラーの命を救うため」と吐露する。
ハドラーはこの時点で余命いくばくもない身。アルビナスは勇者一行の打倒を引き換えに、バーンに主の運命を変えてもらおうと企んでいたのだ。
延命を望まないハドラーに嫌われようと、裏切り者の汚名とともに殺されようと、それで構わない。彼さえ生きてくれればそれでいい……なんと悲痛な覚悟だろうか。
だが、アルビナスの命を賭した戦いは、マァム渾身の“猛虎破砕拳”によって幕を閉じる。核を破壊されたアルビナスは、「私の代わりに見とどけて…あの方の…最後の雄姿を…」そうマァムに願いを託し、爆発とともに散っていった。
最後までハドラーを思って戦ったアルビナス。オリハルコンから生まれてきたからこそ、大切な人に殉じた彼女の死に様には胸を打たれる。マァムはアルビナスの気持ちを「人が“愛”と呼ぶもの」と断言したが、まさしくその通りだ。
『ダイの大冒険』における敵キャラの泣けるシーンを振り返ってきた。こうやって見ると「彼らが味方になっていればなぁ」と思ってしまうぐらい素敵なキャラたちだ。
しかし、彼らがこうも輝いたのは「敵だったから」との見方を筆者は推したい。全身全霊でダイたちとぶつかりあったからこそドラマが生まれ、読者の心に強く残る感動を与えてくれたに違いない。