■豪華俳優陣が贈る新しい形のブラック・ジャック…『瞳の中の訪問者』

 医師であり、医学博士でもあった手塚さんの作品のなかで“医療”をテーマとした作品といえば、かの有名な『ブラック・ジャック』だろう。人気作ゆえにたびたび映像化されてきたのだが、2024年6月30日に高橋一生さんを主演に再度ドラマ化されることが決定し、話題となっている。

 そんな『ブラック・ジャック』だが、1977年に『瞳の中の訪問者』のタイトルで実写映画化されていたことをご存じだろうか。

 本作で監督としてメガホンを取ったのは、のちに『時をかける少女』や『漂流教室』といった作品を手掛けることとなる大林宣彦さんだ。本作は原作漫画のエピソード「春一番」を映像化したもので、目の角膜移植手術を受けた少女が、突如記憶にない謎の映像を見るようになったことで奇妙な事件に巻き込まれていく……という物語だ。

 映画版での主人公は患者の少女・千晶となっており、本来の主役であるブラック・ジャックはメインゲストとして登場するという、かなり大胆なテコ入れがされている。

 本作は豪華な俳優陣も見どころの一つとなっており、主人公の少女・千晶役にはのちに“2時間ドラマの女王”として名を馳せることとなる片平なぎささんが起用された。また、ブラック・ジャック役には、“エースのジョー”の愛称でお馴染みの宍戸錠さんが起用されるなど、なかなか渋いキャスティングとなっている。

 また、いわゆる“友情出演”で登場する俳優が多いのも特徴で、千葉真一さんや檀ふみさん、プログレッシブ・ロック・バンドの「ゴダイゴ」が出演していたりと、実に豪華な顔ぶれが並ぶ。

 患者となるキャラクターを主軸に据えた、今までとは一風違った実写版『ブラック・ジャック』といえるかもしれない。

 

 巧みなストーリー構成や観る者を惹きつけるテーマ性と、いまもなお手塚さんの漫画作品はさまざまな場面で実写化され続けている。誰もが知る名作ゆえに、それをいかに実写映画として表現するのかは、まさに映画監督たちの腕の見せどころといえるだろう。

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