新アニメ『るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー』は第2期「京都動乱」の放送が開始され、ますます盛り上がりを見せている。ついに原作の人気エピソード「京都編」が新アニメとして描かれるということで、往年のファンも見逃せない展開になっている。これを機会に、旧アニメをもう一度観てみたくなった人も多いのではないだろうか。
旧アニメはアニメ界で語り継がれている名作で、その演出は後世のアニメに多くの影響を与えたとも言われている。今回は新アニメの「京都動乱」の放送にあわせて、旧アニメの「京都編」で印象深かった神演出を振り返ってみよう。
■斎藤一との死闘は光の演出で闇堕ちを表現!
旧アニメで「神演出」としてしばしば語られるのが、29話と30話で描かれた新撰組三番隊組長だった斎藤一との戦いにおける演出である。
まずは斎藤戦の内容を簡単におさらいしよう。斎藤と緋村剣心は幕末時代の宿敵であり、当時は新撰組の隊士と討幕派の志士として殺し合いを繰り広げてきた。そして明治時代になってからは、剣心は不殺を誓って流浪の旅をし、斎藤は警官となってそれぞれ東京にいたのだった。
そんなある日、斎藤は剣心を暗殺するため神谷道場に現れる。はじめは剣心が留守にしていたため左之助に重傷を与え、その次は警官という立場を利用して道場にあがりこみ、またもや留守にしていた剣心の帰りを待ち構えていた。
やがて2人の戦いが始まると、剣心が「緋村剣心」から「人斬り抜刀斎」に立ち戻っていくという流れが圧巻の戦闘シーンとともに描かれる。そのときの演出がまた秀逸なのだ。
戦いの中で斎藤に追い詰められた剣心は、不殺の状態では勝てないことを悟ってか、ついにかつての自分に立ち戻ってしまう。口調が変わり、一人称も「拙者」から「俺」に変わる姿は鳥肌が立つほどに恐ろしい。そして映像の面で最も印象的だったのが、剣心が抜刀斎に戻っていく事を象徴するように、夕暮れになっていく演出だ。最終的には、アニメの画面が見づらくなるほどに暗い中で、2人の戦いが描かれる。
剣心が闇に堕ち、人を殺す事に躊躇を持たなくなる姿が、暗闇として表現されている。神谷道場の2人だけが明治の東京から幕末の京都へと移り変わってしまったように、殺伐とした空気が流れていく。その緊迫感を画面の光量で表現する演出をぜひ視聴して体験してほしい。
■美しくも儚い剣心と薫の別れ…
斎藤との戦いの後、剣心たちは志々雄真実という存在を知る。志々雄は人斬り抜刀斎の後継者であり、国家転覆を狙い京都で暗躍していた。それを知った剣心は悩んだ末、志々雄を止めるために京都へと旅立ってしまうのだった。彼が東京で出会った人物の中で神谷薫にだけ別れを告げる名シーンもまた、その演出の美しさが際立っている。
このシーンが描かれるのは旧アニメ第31話でのことだ。自身に志々雄討伐を依頼した大久保利通が暗殺され、剣心は京都へ行くことを決意する。そして明治11年5月14日、ついに剣心は薫に別れを告げるのだった。この場面は原作の表現を改変し、旧アニメ屈指の名シーンを生み出している。
原作では神谷道場の外で剣心は薫に別れを告げる。しかし、旧アニメではあたりに蛍が舞う中で剣心と薫の別れが描かれている。美しくも儚い蛍の光が、2人の別れをより切なく感じさせているのだ。
斎藤との戦いから大久保卿の暗殺までは、激しいバトルシーンやBGMで大きな盛り上がりが演出されている。しかし、この別れのシーンではBGMは最小限で、時間がゆっくりと進んでいく感覚に陥ってしまう。ワンカットワンカットが芸術ともいえる美しい作画で2人の別れが描かれており、旧アニメを代表するシーンとして要チェックだ。