現在アニメ放送中の『鬼滅の刃 柱稽古編』。太陽の光を克服した竈門禰󠄀豆子を狙う鬼舞辻󠄀無惨との戦いに備え、鬼殺隊士が柱による過酷な稽古を受けて訓練するという物語だ。毎週描かれるアニメオリジナルシーンが好評を博しており、SNSでは毎週トレンド入りするほどの人気を見せている。
「柱稽古編」ではこれまでアニメで描かれてきたような鬼との過酷な戦闘シーンはなりを潜め、柱のメンバーの関係性やパーソナルな部分が重点的に描かれる。これまでの内容と比べ、ややコメディチックな描写もあり、落ち着いて作品を楽しむことができる。
さて、2020年に公開された映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』が国内歴代首位となる404億円の興行収入を記録して社会現象となり、『鬼滅の刃』は今や老若男女に愛される作品となった。だが、国民的作品である一方で、「刀鍛冶の里編」までで描かれた内容の中には、「よくアニメにすることができたな」とつい驚いてしまうような凄惨なシーンが放送されたことも少なくない。
漫画通りに忠実に描いてくれたことはファンにとっては嬉しいことこの上ないのだが、夜の放送とはいえ、アニメは「子どもも見るのに大丈夫?」とつい心配してしまうものも中にはあったのではないだろうか。
今回は、「刀鍛冶の里編」までで描かれたアニメ『鬼滅の刃』の、視覚的にグロテスクだったシーンを紹介したい。
■非道な玉壺の「作品」にされた刀鍛冶の断末魔
まずは2023年4月から6月にかけて放送され、記憶にも新しい「刀鍛冶の里編」から。
「遊郭編」で音柱の宇髄天元とともに上弦の陸を倒した炭治郎は、刃こぼれが原因で刀鍛冶の鋼鐵塚蛍を怒らせてしまったことを知り、直接会って話すため刀鍛冶たちの暮らす里へ向かう。しかし、そこに上弦の鬼が襲撃してきてしまう……というのが「刀鍛冶の里編」のあらすじだ。
物語の途中では、里の刀鍛冶たちが上弦の伍である玉壺の「作品」にされてしまうシーンがある。霞柱である時透無一郎と小鉄たちが玉壺と対峙した際に、玉壺は自己紹介とともに自身の「作品」を紹介する。「鍛人(かぬち)の断末魔」と名付けられたそれは、刀鍛冶たちの肉体に刀を突き刺してつなぎ合わせたグロテスクなものだった。
無情感や不条理を表現するためにひょっとこの面を残したなど、悠々と作品のこだわりを語りながら、玉壺が刀鍛冶に突き刺した刀をひねると、痛みのあまり刀鍛冶の断末魔が響く。
人間の尊厳を踏みにじるような非道なことをしておきながら、それを芸術と言い張る姿。何よりも悲惨だったのは、作品にされてしまった中には小鉄のおじさんもいたこと。お面越しの涙とともに小鉄の虚しい叫び声が響いた。