『岸辺露伴は動かない』や『シティーハンター』にも…リアルな表現を徹底追及! 漫画実写化作品で見られた“衣装のこだわり”の画像
Netflix『シティーハンター』(C)北条司/コアミックス 1985

 漫画原作の実写化作品は数多く存在しているが、原作の雰囲気やイメージを再現するためには、キャラクターの“衣装”にもこだわる必要がある。一見しただけではなかなか気付きにくい、実写化作品の衣装に施された工夫の数々について見ていこう。

■原作からの大胆なモデルチェンジ…『岸辺露伴は動かない』

 荒木飛呂彦さんの漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品として人気を博した『岸辺露伴は動かない』が、俳優の高橋一生さんを主演に実写ドラマ化され、その高いクオリティからファンを唸らせ続けている。

『ジョジョの奇妙な冒険』や『岸辺露伴は動かない』に登場するキャラクターは、皆、現実離れした独特のファッションを身に纏っているのも特徴だが、一方でドラマ版の露伴たちは原作のそれとは異なった、落ち着いたデザインの衣装を披露している。

 実はこれ、キャラクターたちの衣装の色、デザインをあえて原作に寄せないことで、より“三次元”の世界に馴染み、視聴者に違和感を与えないよう工夫されているという。原作だと極彩色が散りばめられることも多い『ジョジョ』の世界観だが、一方でドラマはモノトーンを基調とした落ち着いた色合いが多く、より現実的なファッションへとモデルチェンジされている場面も多いのだ。

 ちなみに本作を実写化するにあたり、人物デザイン監修を務めた柘植伊佐夫さんが荒木さんにデザインを見てもらったところ、「わりと原作と離れていただいても大丈夫です」という、まさかのひと言を告げられたとのこと。

 この言葉もあと押しとなり、実写版ではより大胆に衣装デザインを改変することで、原作を再現することにこだわるのではなく、より視聴者が納得する形に落とし込んだのである。
 キャラクターたちが持つイメージをしっかりと抽出した結果、姿形に多少の差異があっても、原作ファンも納得するビジュアルに仕上がっている点は見事と言わざるをえない。

 原作のキャラクター像からあえて離れてみることで、よりリアリティ溢れる実写ドラマを作り上げることができた、なんとも驚きの裏話である。

■“汚し”や“壊し”によって再現される幕末のリアルな生活感…『るろうに剣心』

 1994年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された和月伸宏さんの『るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー』は、その高い人気から2012年には実写映画が公開され、原作ファンのみならず多くの観客を熱狂させた。

 計5作が公開されている実写版映画だが、やはり本作でもよりリアルに漫画の世界を再現するための工夫が、演者たちの衣装に施されている。

 『るろ剣』といえば明治や幕末という過去の時代を舞台にしており、それゆえに人々の生活スタイルや身に着けている衣装も、現代とは一風変わった古風なもので構成されている。

 そんな時代劇の世界をよりリアルに描くため、大友啓史監督がこだわったのは“汚し”や“壊し”の概念。すなわち、その時代に生きる人々の生活感を表現するため、あえて衣装を汚し、壊すひと手間を加えているのだ。

 泥や砂、雨水や汗にまみれた演者たちの衣装は、たしかに豪華絢爛な出で立ちとは言い難い。だが、それゆえに我々とは異なる時代で生活する人々の姿を、実にリアルに再現している。

 さらに、この“汚し”や“壊し”の工夫は俳優たちが演技をおこなう舞台セットにまで及んだ。建物がどれくらいの間、そこに建っているのか、どんな人が暮らし、どんな出来事があったのか。それらによってもたらされる“痕跡”などを刻むことで、スクリーン上にリアリティ溢れるワンシーンを描いていた。

 本来であれば、綺麗に美しく表現しがちな衣装や舞台を“あえて汚す”という、逆転の発想に驚かされてしまうエピソードである。

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