■しんのすけをバカにされた…強面で凄む園長先生

 最後は、ふたば幼稚園の園長先生のエピソードを紹介したい。

 本名を高倉文太、サングラスに天然パーマと派手な黄色いジャケット、そして色黒の強面が特徴の園長先生だ。その怖い見た目とは裏腹に非常に穏やかで子どもたちにも優しく、教育者としてもすばらしい人物である。しんのすけはその見た目から“組長”と呼ばれているが、毎回「園長です」と否定する姿も微笑ましく、ファンの間でも“組長先生”の愛称で親しまれている。

 第148話「組長先生はこわいゾ」は、そんな園長先生の教育者としての素晴らしさが感じられるエピソードだ。大阪出張中のひろしに会うため新幹線に乗ったみさえとしんのすけは、偶然にも幼稚園の会合のため大阪へ向かう園長先生と隣の席となった。

 途中、車窓から見える富士山に興奮し歌い出してしまったしんのすけに、一人の男性乗客が乱暴に怒鳴る。その男性の横柄な態度もいかがなものかと思うが、みさえは「大勢がいるところでは むやみにはしゃいだり騒いだりしちゃダメなの!」としっかりとしんのすけに注意の言葉をかけていた。

 横にいた園長先生も「野原さんいいですねその叱り方。今のお母さんたちは他人になぜ叱られたのかその理由を子どもに教えませんからね。なかには怒った人を悪者にして叱らない人さえいます」と優しく言葉をかけた。

 一方、しんのすけを怒鳴りつけた男性乗客は、禁煙車両にもかかわらずタバコを吸いはじめる。今度はしんのすけがそのことを注意すると、男性乗客は「こんなバカなら幼稚園の先生も苦労しているだろうぜ」と逆ギレし、しんのすけを笑い飛ばしたのだ。

 その男性乗客の態度に園長先生はスッと立ち上がり「しんのすけ君はユニークな子ではありますが…おバカさんなんかじゃありません!」と強面できっぱり否定。男性乗客は「堪忍してください親分さん!!」とビビり上がり、すっかりおとなしくなっていた。

 受け持つ子どもをバカにされたら、どんな相手だろうとしっかり否定し、その場で注意できる園長先生は非常にカッコよく、子ども思いのすばらしい教育者だとあらためて思うエピソードだった。

 

 今回は、優しさに泣けるふたば幼稚園の先生たちの子ども思いエピソードを紹介してきた。

 本作は軽快なギャグが飛び交う作品として注目されがちだが、今回紹介したようなエピソードのように、人の優しさを感じるものがたくさんある。今回はふたば幼稚園の先生に注目したが、もちろんそれ以外の登場人物も、それぞれ人としての魅力がしっかり描かれている。そんな丁寧な作りが、本作の人気の秘密かもしれない。

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