「どうせ最後は主人公が勝つだろう」バトル漫画の宿命ともいえる感想だが、これが通用しないのが敵同士のバトルだ。味方陣営がいないからこそどちらが勝つか予想できず、先の見えない対戦に読者はハラハラドキドキできる。後世まで語り継がれる名バトルが生まれることも珍しくない。
そこで今回は、名作ジャンプ漫画でくり広げられた敵VS敵バトルを紹介しよう。
■命だけでなく正体も懸けた死闘『ジョジョの奇妙な冒険』ドッピオVSリゾット
まずは荒木飛呂彦氏の名作バトル漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)の第5部から、ヴィネガー・ドッピオVSリゾットの死闘だ。
イタリアを根城とする巨大ギャング組織「パッショーネ」にともに所属する2人だが、その立場は大きく違う。ドッピオはギャングのボス・ディアボロのもうひとつの人格として、リゾットはボスに冷遇された暗殺チームの生き残りとして。それぞれ譲れない事情を抱えた両者が、サルディニア島で激突した。
このマッチメイクは何度も優劣が逆転するスタンドバトルが見どころだが、それ以上に面白いのが「ドッピオ=ディアボロがバレるのか?」という情報戦だ。
戦いの裏で主人公ジョルノ・ジョバァーナたちは倒すべきディアボロの正体を探っている。主人公たちが求める真実に、本来敵であるリゾットが肉薄する展開が熱い。
ギャング同士の激しい戦いは、ディアボロにより発動した無敵のスタンド「キング・クリムゾン」によってリゾットの敗北で幕を閉じる。だがリゾットは憎きボスの正体に誰よりも早く気づいており、あと一歩のところまで追い詰めていた。
結末まで先が読めなかったこのバトルを『ジョジョ』のベストバウトに挙げる人も少なくない。
■「オレをなめるなァッ!!!」がカッコよすぎる『ダイの大冒険』バーンVSハドラー
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修 :堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)では、誰も予想できなかった敵VS敵のバトルが勃発した。大魔王バーンと、その右腕としてダイたちを何度も苦しめた宿敵ハドラーの一騎打ちだ。
まさかのバトルが始まったのは第211話「まさか!!?の救援者の巻」でのこと。
バーンの圧倒的な力に敗北を喫した勇者パーティーの前に現れたのは、「黒の核晶(コア)」による大爆発で死んだはずのハドラーだった。
ダイたちを倒すために超魔生物となったハドラーにとって、ダイの命は誰にも譲れない。大魔王ですら例外ではないと立ちはだかるハドラーに、バーンは裏切り者への処刑を開始する。
先ほどまで勇者パーティーを寄せ付けなかったバーンがその牙をむける……作中の誰もが、読者すらもハドラーの死を覚悟した次の瞬間、彼はバーンの一撃を受け止める! そしてこう叫んだ!
「オレをなめるなァッ!!! 大魔王ォッ!!!!」
ハドラーの気迫が大魔王バーンをはねのけたこのシーンは、ダイたちが一方的になぶられてきた前話までの絶望を一気にカタルシスへと変えた、本作屈指の名場面だろう。
バーンの「いまや余に匹敵するほどの強さを手に入れつつあるのでは…!!?」というハドラーへの評価も、敵だというのに嬉しかったものだ。