■本格バイク漫画人気を陰ながら支えたのはアノ肝っ玉母さん?…『ふたり鷹』

『週刊少年サンデー』は、1980年代にも多くの名作を生んだ。この時代からは、『ファントム無頼』や『エリア88』など戦闘機を題材とした漫画で知られる、新谷かおるさんの本格バイクレース漫画『ふたり鷹』の再アニメ化に期待したい。

 1981年から1985年にかけて連載された本作は、同じ日、同じ病院で生まれた二人の主人公・沢渡鷹と東条鷹が、オートバイで互いに競い合う物語。病院での火事をきっかけに、社長の息子と母子家庭の息子が“入れ替わってしまう”という設定だ。

 昭和っぽい懐かしい設定ながら、それを面白くしたのが肝っ玉母さん・沢渡緋沙子の存在だ。緋沙子は出産時に医師である夫を火事で失うが、息子を抱えながらも強くたくましく生きる。美しい彼女に、当時の女性読者はこぞってファンとなった。

 1984年にテレビアニメ化され、沢渡鷹を古谷徹さん、東条鷹を塩沢兼人さん、そして沢渡緋沙子を藤田淑子さんが担当。また、音楽は久石譲さん、主題歌とエンディングを俳優の陣内孝則さんが歌うなど、思い返せばかなりの豪華な顔ぶれだ。

 とはいえ、当時のアニメはたび重なる放送時間と曜日変更が行われ、さらにアニメオリジナル展開や映像も多く、アニメ制作会社である国際映画社が倒産したこともあってか、全36話という中途半端な形で終了を迎えてしまう。

 漫画連載も1985年に幕を閉じ、コミックスは全19巻が刊行。精密なバイク描写とともに、練り込まれたキャラクター設定や人間関係にも大きな魅力がある本作だけに、個人的には令和の今こそ、あの強くて美しい女性・緋沙子をアニメ映像で観たいと思う。

 他にも、『マギ』そして『焼きたて!!ジャぱん』など、連載終了から時がたっても話題となる『サンデー』発のアニメ化作品は数多い。それだけ私たちの心に刻まれた名作なのかもしれない。

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