■あまりにも不可解な空気感が漂う「こたつ依存症」

 同じ2007年に放送された「こたつ依存症」のエピソードも、ファンの間でたびたび話題に上がる珍回のひとつだ。

 こちらは寒い冬に、サザエさん一家がリビングのこたつを取り合うという日常のほのぼのエピソードだが、ラスト十数秒に不思議な演出が入る。なぜか「ポク……ポク……」と、木魚のような音がゆっくりと響くだけの奇妙な音楽をバックに、サザエさん一家がそれぞれの部屋で寝ているシーンが流れるのだ。そして電気が消えたリビングのこたつのカットが描かれ、その後回想シーンのようにサザエさん一家が皆でこたつに入っているシーンが挿入され、そのままこの回は終了となる。

 急にセリフが一切無くなり、静かで奇妙な音楽が流れるのは、いつもの『サザエさん』とは違った演出。また、就寝シーンではタラちゃんとマスオが同じ布団で寝ている描写があるが、なぜかサザエがその場にはおらず、最後の最後まで彼女は姿を見せない。サザエは一体どこへ行ってしまったのか、そしてなぜ真っ暗な部屋の不気味なこたつカットが挟まれるのか。

 最後のカットは、昼間に磯野家のみんなに愛されたコタツの寂しい気持ちを演出しているのかもしれないが、謎の多いエピソードとしてファンの間で語り継がれている。

 他にも、サザエさん一家が全員パリピ風になってしまう「わが家のニューモード」など、まだまだ迷エピソードは存在する。おかしな回である一方で、ネットを盛り上げるこうしたエピソードをリアルタイムで目撃すると、ラッキーと感じてしまう視聴者は筆者だけではないのではないだろうか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3