『北斗の拳』バットに『進撃の巨人』エレンも…有名漫画に登場する“最愛の母と少年の悲しい別れのシーン”3選の画像
『北斗の拳 究極版』第16巻(徳間書店)

 少年・青年漫画における主人公の多くは、多感な時期の少年である。とくにバトル漫画では幼い面影の残る少年が多くの経験を積み、成長しながら敵と対峙していく展開が多い。

 しかしそうした少年には悲しい出来事が訪れることも多く、その1つに最愛の母との別れが挙げられるだろう。母と息子との別れはつらく、読んでいるこちらも感情移入して思わず涙してしまうことも多い。今回はそんな少年と母親における切ない別れのシーンを紹介したい。

■最後に言えた“お母さん”の一言『北斗の拳』

 80年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)で人気を誇った『北斗の拳』。原作・武論尊さん、作画・原哲夫さんによる本作は荒廃した世界を舞台に、主人公のケンシロウが活躍する物語だ。

 ここでの少年と母との別れのシーンは、ケンシロウの弟的な存在であるバットと、その育ての親・トヨとの別れだ。

 トヨはバットをはじめ、多くの孤児たちを1人で育ててきた老婆だ。その苦労を知ったことで家出をしたバットだが、久しぶりの再会シーンでも、トヨは「どのツラさげて帰ってきた! この道楽者のバカ息子!」と迎え、バットも「このクソババア〜!」と、お互い素直になれない。

 バットたちはトヨの村に水をもたらすために訪れたのだが、それをジャッカル一味に知られてしまい、ケンシロウが去ったあとトヨたちは襲撃されてしまう。ケンシロウやバットが駆けつけるものの時すでに遅し、トヨはダイナマイトの爆風により致命傷を負ってしまっていた。

 バットの腕のなかで、“本当はお前がやさしい子だと分かっていた”と告げるトヨ。それまで“ババア”と呼んでいたバットだが、泣きながらトヨに「おかあさ~~ん!!」と叫ぶ。その声を聞き、トヨは微笑みながら亡くなるのであった。

 昭和の時代には、大切な人が最期を迎える場面が漫画やドラマでよく描かれていた。この場面もそんな典型的なシーンの一つではあるが、素直になれない母と息子が最後に感謝の気持ちを伝え合えた貴重な瞬間である。今でもこの場面を思い出すと、胸が熱くなってしまう。

■漫画史上最も残酷!? 衝撃的な別れのシーン『進撃の巨人』

 諫山創さんによる『進撃の巨人』は、主人公のエレン・イェーガーが仲間とともに故郷を襲った巨人たちと対峙していくストーリーである。そんな本作には、あまりにもショッキングなエレンと母・カルラの別れのシーンが登場する。

 巨人がエレンの家を破壊し、下敷きになってしまったカルラ。エレンは間一髪のところで駐屯兵団に救いだされるも、カルラは「生き延びるのよ…!!」とエレンに告げ、そのまま巨人に捕食されてしまう。

 カルラが巨人に食べられる光景を目の当たりにし、狂気に近い復讐心を抱いたエレン。本作で最も有名なセリフであろう、巨人に対する「駆逐してやる!! この世から…一匹…残らず!!」は、このシーンがきっかけで生まれている。

 エレンはここから、たくましい調査兵団の戦士へと成長していく。漫画界のなかでも稀に見る残酷な別れ方ではあるが、エレンは母の悲劇を背負い、その苦しみを力に変えていくのだ。また、ストーリーが進むにつれて、この母との別れが物語の展開に深い影響を与えていることも明らかになっていく。

 それにしても、息子が逃げ延びることを望み、その背中を見送りながらも瓦礫の下で「行かないで…」と小さくつぶやいたカルラの想いを考えると、どうにもやるせなくなってしまう印象的なシーンだった。

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