いよいよ7月公開『キングダム 大将軍の帰還』ではどう描かれる? 『キングダム』目を背けたくなるトラウマシーンの画像
(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

 紀元前の中国を舞台に、戦国七雄の一国・秦が初めて中華統一を成すまでを描く、原泰久氏による『キングダム』。7月12日に公開予定のシリーズ4作目となる実写映画『キングダム 大将軍の帰還』の公開を控え、新たなキャストが次々と発表され、ファンも多いに盛り上がりを見せている。

 登場する個性的なキャラクターや胸を熱くする劇的なストーリーも魅力だが、時折当時の戦争の悲惨さも垣間見え、つい目を背けたくなってしまうこともある。

 それは単に生々しい描写に限ったことではない。各キャラクターの心情に寄り添うことでも、戦争がいかに恐ろしいかが感じられるのだ。

 今回はそんな『キングダム』から、つい目を背けたくなってしまうトラウマシーンをいくつか紹介しようと思う。

■殺意が可視化されたような生々しい過去の戦争の様子

 『キングダム』において、初めて他国と戦争する様子を描いた「蛇甘平原」の戦いでは、当時の生々しい戦争の様子が描かれた。

 初陣で魏への侵攻作戦に参加した信は、軍編成を経て突撃隊の最前線に配置される。目の前ではすでに、秦と魏両軍の歩兵隊が激しい乱戦を繰り広げていた。大地を揺らす怒声や視界を赤く染める血しぶき、人体が容赦なく分断される様子など地獄絵図とはまさにこのことである。

 初動をうまく生き抜いた信たちだったが、常に変化を続ける戦場で油断はできない。

 そのとき、地鳴りとともに巻きあがった砂煙の先から現れたのが、魏の戦車隊だった。馬が荷台を引き、搭乗した兵士たちが矛を振り回すという当時の戦車。車輪にも刃が付いており、触れればミンチになってしまうことは間違いない。これに対して信たちは、死体を積み上げて防壁を作ることで正面からの突撃を防いだのだった。

 このシーンを読むと、もし自分が当時の戦争に参加していたらこの戦いでどのように立ち回るかを想像してしまう。吐き気をもよおすほどの恐怖を抱きながら、目の前で繰り広げられる乱戦に突撃できるだろうか。また、戦車隊を前に先ほどまで生きていた人間を利用し、壁を作るという冷静さを保てるだろうか。

 兵士たちが残酷な死を迎える描写はもちろんだが、目まぐるしい展開に常に付きまとう計り知れない恐怖感に押しつぶされそうにもなる、『キングダム』の序盤におけるトラウマシーンの一つである。

■遠い過去に確かに起きていた凄惨な事実

 史実に基づく中華の恐ろしい出来事としては、「長平の戦い」も忘れてはならない。

 白起将軍率いる秦軍が長平にて趙軍と対峙し、秦軍勝利の末に趙の捕虜およそ40万人を生き埋めにしたとされている出来事である。紀元前の出来事とあって諸説はあるが、『キングダム』では捕虜目線での恐ろしい描写がなされていた。

 長平のだだっ広い荒野に巨大な穴が無数に掘られ、その淵に少年・万極らを含む人々が隣の人と手足を縄で繋がれ立たされる。引け目を感じている部下には目もくれず、「やれ」と白起が無慈悲な号令を下すと、秦の兵士が綱を引っ張り趙の人々を穴に落としていくのである。

 恐怖で泣き叫ぶ万極たちに対し、秦の兵士たちが笑いながら土を投げ入れている様子があまりにも残酷で、さらにこの出来事が「事実」であるということには恐ろしさから身震いしてしまう。

 秦にしてみれば、この40万人を生かしてしまうとのちに国の脅威となることを危惧しての凶行だった。しかしそれは、むしろ趙の人々に秦への憎しみを植え付けることになり、奇跡的に生き残った万極が決死隊となって、結果的に秦軍の脅威になるのである。

 万極ら趙の人々の恨みは計り知れず、“やられたからやり返す”という憎しみの連鎖は現代でも変わることなく戦争の原因となっている。長平にておこなわれた虐殺に恐ろしさを覚えると同時に、人々に植え付けられた憎しみがその後何をもたらすのかを考えさせられ、武力による争いは一生なくなることはないのだと痛感してしまうシーンである。

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