■縦に並ぶ5つの顔…恐怖を植え付けられた『イナズマン』の「イツツバンバラ」

 最後は1973年に放送された『イナズマン』から。主人公は超能力者の渡五郎という大学生であり、同じく超能力を持つ少年少女たちと力をあわせて悪の超能力者を倒していくストーリーだ。1970年当時はオカルトブーム真っ最中だったため、その影響もあってか、随所にそういった要素が盛り込まれていたのが特徴的だった。

 多くのミュータンロボットが登場する本作だが、いきなり強烈なインパクトを残したのが、第1話に登場する「イツツバンバラ」だ。

 冒頭、暗闇から水色の無表情な5つの顔が現れる。これだけでも十分怖いのだが、そのうえ、赤のボディスーツを着ているので不気味さ満点だ。当時、初めて見たときは本当に恐怖だった。夜、目が覚めたら暗闇に立っていそうで、なかなか寝付けなかったことを覚えている。

 イツツバンバラは地割れを起こすほか、口から炎を吐き出す技を持っており、なかなか優秀な敵キャラだった。だが、主人公の五郎を殺し損ねてしまい、秘密結社の“少年同盟”によって正義のヒーロー・イナズマンを誕生させることとなってしまう。

 そんなことは知らず、部下とともに市民を痛めつけるイツツバンバラ。そこに五郎が変身したサナギマンが登場し、手下どもをやっつけていくのだ。でも、サナギマンはエネルギーを溜めるために必要なフォルムで、イナズマンへの第一形態。確か、弱かったような?

 そう思って第一話を見直してみた筆者だが、やはりここではしっかりと敵をやっつけていた。いつの間にか“サナギマンは弱い”という印象を持ってしまっていたのだが、そうではなかった。最初のうちは例外ともいえるかもしれない。

 イツツバンバラは5つの顔があるだけに背が高い……というよりも長くて重そうだ。最終的にイナズマンにその先っぽを持たれて、軽々と投げられていた。イナズマンの強さを視聴者に期待させるための“かませ犬”的な敵役として、十分な役割を果たしていたように思う。

 

 今回紹介した以外にも、特撮作品には気持ち悪い敵キャラが多く登場する。ヒーローたちの強さやカッコ良さを視聴者に分からせるためには欠かせない存在なのだが、見ている子どもたちにとっては恐怖のトラウマとなって残ってしまうこともあっただろうな。

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