■『BLEACH』ユーハバッハ

 最後は久保帯人氏による『BLEACH』(集英社)のユーハバッハを紹介していこう。ユーハバッハは、最悪のラスボスといっていいほどの実力者だ。あまりの強さに、どうやって倒したら良いのか検討もつかないキャラでもある。

 そんなキャラが負けたことがあるのか?と疑問に思うが、実は彼は千年前、護廷十三隊の総隊長である山本元柳斎重國との直接対決で敗れているのだ。その際生殺与奪の権利が山本に与えられるが、山本はとどめを刺さないことを選択してしまった。

 それによって千年の間力を取り戻して、さらに強くなったユーハバッハが登場することになったのだ。これには涅マユリが「総隊長 貴方が 千年前のあの時 あの男を殺し切れなかった所為ではないのか!」と苦言を呈する……。読者としてもユーハバッハの馬鹿げた強さを見ると、その通りだと思ってしまった。

 山本は自らの手で決着をつけようとしたが、返り討ちにあってしまう。そこから霊王宮まで進軍されたうえ頼みの綱だった零番隊は壊滅、霊王までも切り捨てられたので絶望しかない。

 しかもユーハバッハは全知全能の能力を手にしてしまったので、完全に手がつけられなくなった。流石にこんな状況になってしまうと、「山本、あの時しっかり仕留めておけよ!」と叫んでしまいたくなる。

 山本とユーハバッハとの過去の戦いは本編で描かれておらず、どんな理由があって生かしたのかは知らない。しかし、山本が完全に選択間違いをしたのはいうまでもなく、被害者の数は相当だろう。

 

 情をかけて生かされた悪役キャラの中には、その後とんでもない成長を遂げる者や多大な影響を与える者がいる。それによって世界の危機にまで発展するので、生かす判断を見誤るとかなりマズイ状況になるといえるだろう。

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