悪役キャラにはいくつものタイプがある。途中で改心するキャラもいれば、悪を貫き通し以前よりもひどくなるキャラなど実にさまざまだ。
そこにはもとの性格が大きく関係していて、プライドが高いキャラほど復讐心が強いともいえる。そして、そんなキャラをうっかり生かしておくと、その後とんでもないしっぺ返しを喰らうことにもなるのだ。
そこで今回は、情をかけたことが仇になってしまった、「あのときとどめを刺しておけばよかった……」と思ってしまうキャラを紹介していきたい。
■『NARUTO-ナルト-』大蛇丸
まずは岸本斉史氏による『NARUTO-ナルト-』(集英社)の大蛇丸から紹介していこう。大蛇丸はもともと、伝説の三忍という通り名がつくほど優秀な忍で、自来也や綱手とともに戦果をあげている。本来なら里の英雄として、その後も皆のために尽力するのが普通と思われるが、大蛇丸は違った。
大蛇丸は自らの研究に没頭して、不老不死の禁術に手を出して悪に染まってしまう。それによって、多くの人間を実験体として殺しまくったので、伝説の三忍といえど許されるはずもない。
そこで三代目火影で大蛇丸の師匠でもある猿飛ヒルゼンが、大蛇丸の抹殺に駆り出されることになったのだ。しかしヒルゼンは大蛇丸を殺すことができず、そのまま逃がすことになる……。
それによって起こってしまったのが、木ノ葉崩しや大蛇丸を神のように崇拝するカブトの暴走。もしヒルゼンが大蛇丸を生かしておかなければ、カブトが大蛇丸の跡を継いで穢土転生の研究をすることもなかっただろう。
そうなると、第四次忍界大戦も起こらなかったかもしれないということだ。そこから見ても大蛇丸が周囲に与えている影響は、かなり大きかったことがよく分かる。
どうしてヒルゼンは大蛇丸を殺せなかったのか……それについては詳しくは描かれていないが、おそらく愛弟子だったからだろう。しかし、結果的にその大蛇丸に殺されてしまうとは、夢にも思わなかったはずだ。
■『北斗の拳』ジャギ
次は原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏による『北斗の拳』(集英社)のジャギだ。ジャギといえば「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねえ!!」で有名な北斗4兄弟の三男である。
ジャギが暴走したのは、ケンシロウが北斗神拳伝承者に決まったときだ。末っ子のケンシロウが伝承者になることに納得がいかず、ケンシロウに向かって「親父にあやまり 伝承者を辞退してこい」と脅してきた。
しかし、ケンシロウは怯まずにジャギを返り討ちにすると、「北斗八悶九断」を喰らわせて命を奪おうとした……。だが、拳を振り抜くことができずに途中で止めてしまったのだ。そして、「行け!きさまに伝承者の資格はない!!」と話してジャギを逃してしまう。
これによって起こってしまったのがシンの乱心だ。ジャギがシンを「奪いとれ 今は悪魔がほほえむ時代なんだ!!」とたぶらかしたことによって、シンはケンシロウからユリアを強奪し、結果的には命を落とすことになった。
他にもジャギがいなければ救えた命もたくさんあっただろう。地中に埋められてのこぎりで首を切られる人もいなければ、無意味に殺される子どももいなかったはず……。ジャギが生きていて良かったことは何ひとつない。
『北斗の拳』では、ジャギの他にもボルゲがケンシロウに生かされていて、それによってバットが拷問されてしまう。過去にリュウケンも言っていたとおり、ケンシロウのやさしさが巡り巡って災いになってしまったのである。