■毎回考察が止まらなかった「山姥」

 さて、このほかにもちいかわの世界には様々なモンスターが登場する。2022年9月18日投稿回から始まった「山姥(やまんば)編」では、敵か味方かわからず毎回ファンの間で考察を呼んだ「山姥」が登場する。

 マロングラッセの森で罠にかかったちいかわたちを助け、料理やお菓子で手厚くもてなした山姥だったが、夜に包丁を研いだり(実際は本枯節を削っていたのだが……)と、その姿にはまるで“昔話”のような怖さがあった。

 ずっとちいかわたちの笑顔を見て優しそうな顔をしていた山姥は、翌日の朝にはついに正体を現すかのように呪文を唱え、ちいかわたちに攻撃のようなことをしようとしてきた。結局はうさぎが味噌汁に入れた毒キノコで眠ってしまったので事なきを得たが、最後まで油断できないのが「ナガノワールド」の魅力なのだろう。

 “昔話”の山姥のように、同じく往年の物語を想像させるのは「三ツ星レストラン編」に登場した「コック」。

 レストランに入ったちいかわとハチワレは、宮沢賢治さんの小説『注文の多い料理店』さながら、料理の注文の前にお風呂に入らされたり、おまじないとして塩こしょうを振られたり、食事用の準備を施されてしまう。

 最後は店主とみられる緑色の巨人にトルティーヤ巻きにして食べられそうになってしまった。このコックはかなり巨大で、最後まで漫画の中では大きな手足しか登場しなかったが、そこがまた恐ろしさを増幅させた。

 度重なるピンチの中でも結局はなんとかなり、毎日を楽しく暮らすちいかわたち。単にかわいい物語だと思っていたら痛い目を見るかも?

  1. 1
  2. 2
  3. 3