80年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)の代表作である『北斗の拳』。原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による本作は連載開始から昨年40年を迎え、東京や名古屋などで「北斗の拳40周年大原画展」も開催されている。
そんな『北斗の拳』には魅力的なキャラクターが次々と登場するが、意外な人気を誇るのがケンシロウたちにやられる“ザコキャラ”たちである。ザコの多くはモヒカンヘアで「ヒャッハー!」といった奇声をあげ、勢いだけは良いものの、正直、あまり賢くはないイメージがある。しかし本作には、実は頭の良いザコもさりげなく登場しているのをご存じだろうか。
今回はそんな一般的なザコとは違う、知性を感じられるザコを紹介したい。
■「おれはあの男に賭ける」ケンシロウの強さを見抜いたザコ
まずは、コミックス7巻に登場する「哀しき賭け! の巻」より、ケンシロウの強さを見抜いた賢いザコを紹介したい。
主人公・ケンシロウの兄であるトキを助けるため、大監獄「カサンドラ」に入ったケンシロウたち。そこには恐ろしい伝説を持ったウイグル獄長が待ち構えていた。ケンシロウは門番である衛士・ライガとフウガを従順させ、自ら扉を開けさせたことで内部にいたザコたちを驚かせる。
しかしザコの1人は「へっ…バカなやつだ いくらなんでも獄長に勝てるものか!!」と、ケンシロウを馬鹿にする。それに対し、隣のザコが「おい この勝負に晩めし賭けねえか」とつぶやく。それを聞いたザコは「ん~おういいともよ! どっちに賭ける もちろん獄長に……」と言いかけたところ、隣のザコは「いや……おれはあの男だ…」と、ケンシロウを見つめるのであった。
カサンドラに入ったケンシロウを見るなり、その強さを見極めたザコ。彼はお馴染みのモヒカンヘアだが、ほかのザコと違って精悍な目つきをしており、いかにも知性がありそうだ。
その後、ウイグル獄長と戦ったケンシロウは獄長のムチの先を目に見えぬ速さで縛るなど、実力を見せていく。その様子を見たほかのザコたちも「賭けよう」「おれたちもこの男に!!」と、ケンシロウの強さに目を見張るのであった。
知性のある人の発言は影響力があるというが、それは『北斗の拳』のザコの世界でも同じかもしれない!?
■「美しい」南斗水鳥拳の美しさが分かる芸術センスに長けたザコ
続いてコミックス9巻「南斗六聖拳墜ちる時 の巻」より、レイVSユダの戦いを見ていたザコのセリフを紹介したい。
ラオウとの戦いで、秘孔「新血愁」を突かれてしまったレイは、最後に同じ南斗六聖拳の妖星の男である宿敵・ユダとの戦いに挑んだ。
ユダの攻撃をかわし、宙に舞い、南斗水鳥拳でユダを傷つけるレイ。その姿を見たユダの部下の1人は「おお… 美しい あれが南斗水鳥拳!!」と言ってしばし“ボワー”と立ち、南斗水鳥拳の美しさの余韻に浸っていた。しかしその姿を見たユダは激高。「この世で一番美しいのはだれだ!!」「このおれだろうが〜!!」と叫び、そのザコの顔を切り刻んでしまう。
そもそもレイの南斗水鳥拳は美しい技として有名であり、修行中にその美しさを目の当たりにした同士たちも“いつみても美しい”と口にしていた。しかしユダはその美しさにショックを受け、あまりの悔しさからレイに対抗心を持ち敵対してしまう。
最初からこの芸術センスの分かるザコのように、レイの美しさを認めていれば不毛な戦いはしなくて済んだのに……。そんな背景も分かる、芸術センスに長けたザコの一言だった。