■血のつながりのない親子の絆…『親子ゲーム』

 1986年に放送されたのが、長渕剛さん主演の『親子ゲーム』だ。主人公の元暴走族・矢板保役を長渕さん、恋人役の三石加代を志穂美悦子さんが演じており、2人は同棲しながら下町のラーメン屋を営んでいる。

 保は綺麗な女性を見るとすぐにナンパしてしまうようなどうしようもない浮気性だ。基本は加代一筋に見えるのだが……(いや、見えないか)自分は好き放題浮気するが、パートナーにされると怒る。あれ、最低じゃん……。

 保のラーメン屋に訪れた人見知りの小学4年生・吉田麻理男(柴田一幸さん)は、タバコを買いに行くと言って出て行った父にそのまま捨てられてしまう。そして、植木等さん演じる警察官の頼みで、少年は保と加代が引き取ることとなった。

 麻理男は前年発売された『スーパーマリオブラザーズ』にちなんでいるのか、強いマリオと弱虫な麻理男というネーミングがシンクロしている。作中では、長渕さんがファミコンをしている貴重なシーンもあった。(しかもヘタクソ……)。

 ほとんど喋らない麻理男の心は表情で汲み取るしかないのだが、子役の柴田さんの演技が素晴らしく、複雑な心境の少年を見事に表現していた。

 本作は、血のつながりのない親子の絆が深まっていく感動作でもある。同棲している2人は、人前でも容赦なく本音で喧嘩をする。店がボロボロになるくらい激しく争うのでまだ子どもの麻理男には悪影響なものの、しかし麻理男は本音でぶつかり合うそんな2人を羨ましく思っていた。

 あるとき、破局寸前まで喧嘩してしまう2人だが、麻理男が毎日付けているノート(日記)には自分を捨てた両親との無言の空間が嫌でしょうがなく、本音で語る2人に自分も加わりたいと記してあった。その文面を読んで思い直した保と加代……仲直りをして3人で銭湯に行くシーンは感動的だったものだ。

 最終的に父親が引き取りに来るシーンも感涙もので、人の優しさや弱さ、強さ、絆というのがとても垣間見られる作品だった。主題歌はもちろん長渕さん。「SUPER STAR」はバイクに乗って口ずさみたくなる名曲だ。

 

 昭和のホームドラマには令和の今では考えられないような演出なども多々あったが、それでもどこか温かく、お茶の間を和やかな雰囲気にさせていた。

 ここで紹介できなかったグッとくる名作ホームドラマはほかにもある。機会があればまた紹介していきたい。

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