■私設レンジャー隊を創設していたヂェーンの気づかいに感動

 バトルシーン以外で感動したのはヂェーンのエピソードだった。ジャングルの平和を守るターちゃんは家事にも忙しい。そんな彼は、ヂェーンがジャケットに着替えて朝早くにお金を持って出かけて行くのが気になっていた。

 まあ、稼ぎはターちゃんのガイド料やトーナメントの賞金だろうし、一人で町に出て好き勝手買い物しているようならイライラもするのだろう。しかし、実はそうではない。

 ヂェーンは私設レンジャーを創設しており、その陰のオーナーとなっていたのだ。アフリカ大陸は広大なので、ジャングルの平和はターちゃん一人で守れるものではない。そこで、ヂェーンはレンジャー隊を創設して必要経費を自ら分配していた。両手でお金を直接手渡しながら「少ないけど これでがんばってね」と一人一人の隊員に声をかけている。

 自身は8年前に買ったジャケットを着ているのでつぎはぎだらけでみすぼらしい格好なのだが、自分にお金をかけずに相手を労う姿勢には隊員たちのモチベーションも上がるものだ。

 これには筆者も驚くと同時に、普段のヂェーンの守銭奴的な価値観は、ターちゃんや動物たちのためだったのだと感動した。

 その後、ターちゃんは豪邸に住んでいるアナベベ宅のシルクのカーテンを切り抜いて、ヂェーンのためにジャケットを作っていた。ターちゃんの優しさにもグッときたものである。

 

『新ジャングルの王者ターちゃん』には感動するシーンが多く詰まっている。筆者も若い頃に読んで感動していたものだが、年齢を重ねて改めて読むと涙腺が崩壊しそうになってしまう。そこにしっかり下ネタやギャグを挟んで笑わしてもくれるので、まさに「最高の漫画」といえる作品だ。

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