■戦う変身美少女のルーツはお色気たっぷりなヒロイン
幅広いジャンルで活躍する人気漫画家・永井豪さんの『キューティーハニー』(1973年)は、アンドロイドの如月ハニーが犯罪組織パンサークローと戦う美少女アクション漫画。『週刊少年チャンピオン』に掲載された本作は、さまざまな姿(職業)に"変身"することから元祖「戦う変身美少女」ともされている。
インタビューなどによると、『キューティーハニー』が誕生したきっかけは、当時の東映動画(現:東映アニメーション)で企画部長をしていた有賀健さんのアイデアなのだとか。アニメ連動作の『デビルマン』(1972年)や『マジンガーZ』(1972年)を手がけた永井さんに、有賀さんは「次はお得意の"色っぽいやつ"」と話を持ち掛け、さらに「女の子が主人公」や「ファッションが七変化的に変わる」というアイデアを出したのだそう。
これを受け永井さんは、必ず着替え(変身)シーンを入れるため「ハニーフラッシュ」を考案。そして一瞬で変身するのに説得力を持たせるためにハニーをアンドロイドにしたり、「空中元素固定装置」を設定したりしたのである。
また、当時は女の子を色っぽくするのはタブーだったが、永井さんはお色気シーンを、読者である子どもたちの「本能的願望」とし、「毒を遠ざけるのではなく少しづつ与えて耐性を作る」とした考えで、自身の哲学のもとに描ききった。
お色気たっぷりなハニーとその変身シーンが誕生した陰には、さまざまな思いや考えが詰まっていたのだ。
多くの漫画雑誌が誕生し、漫画表現においてもさまざまな試行錯誤が行われたこの時代。かわいいヒロインの誕生ひとつとっても、漫画家たちの苦心が込められているのは言うまでもない。