■現実離れした恐怖に大混乱…『GANTZ』
最後は、奥浩哉氏による『GANTZ』の大阪編でのワンシーンだ。本作にはさまざまな星人が登場して、人間とバトルを繰り広げる。まるでゲームの世界のような出来事で、一般人が巻き込まれることはほとんどなかったが、途中から変わっていく。
大阪編では、オニ星人編同様に一般人が玄野や星人たちの姿を認識できるようになっていた。大阪を舞台に妖怪のような見た目の星人がいろんな場所から湧き出て、一般人に見境なく襲いかかってくる。
一般人からすれば、これは特撮か何かだと勘違いしてしまい、現実で起こっていることとは理解できていない。特に残酷だったのが、人々が捕まえられて首を無理やり引きちぎられて死んでしまう場面。
そんな無惨に殺されるさまを見たことで、一般人も「逃げなければ確実に殺される」ということがはっきりと分かった。そこからは恐怖が押し寄せて大混乱となってしまう。対抗できる術などがあればいいが、それもないからただの絶望しかない……。
平穏な日常がいきなり壊されるシーンでもあり、すぐに死に対する覚悟ができるはずないだろうとも思ってしまった。
漫画やアニメに登場する、一般人によって演出される死の恐怖はかなり効果的である。主人公たちとは違って特異な力を持つわけではなく、読者も同じ気持ちにさせられてしまうからだと思う。
そんな彼らが成すすべもなく殺されてしまうさまは悲惨で、運がなかったとしかいいようがない……。