■パスなら自分で働いて買うさ…希望に満ちた「これからの星」
コミックス7巻に登場する「これからの星」は、上記に紹介した“明日の星”に似た惑星だ。
古いホテルに宿泊した鉄郎とメーテルは、そこに住む奈美という娘と、その父親から豪快にもてなしを受ける。しかし“突発性台風”という暴風に巻き込まれ、ホテルは全壊し、2人はパスをはじめ全ての荷物を失ってしまうのだ。
駅前に座り込み、途方に暮れる鉄郎とメーテル。鉄郎はパスが台風で飛んだのではなく、あの父娘が盗んだのではないかと怪しむ。しかし後日、父娘は鉄郎たちのパスや荷物を駅まで届けてくれる。しかもそれは、町内総出でみんなが探し集めてくれたという。
驚いた鉄郎は「だれも 定期を使って 999に乗ろうと思わなかったのかい?」と聞く。すると父娘は「そんな物ほしくないわ」「働けばいつか自分で買えるよ、みんなそう思うとる」と、当然のように笑顔で答えるのであった。
それまで何度もパスを盗まれてきた鉄郎が、父娘のことを疑ってしまうのも無理はないだろう。しかしこの話はまさに“世のなか捨てたもんじゃない”と思えるエピソードだ。星を旅立つ時に鉄郎が、「生まれるならこんな星に生まれたかったなあ」と言っているのにも納得だ。
『銀河鉄道999』に登場する星には、鉄郎とメーテルのパスを盗んだり、体を機械にしようとしたりと、恐ろしい住人がいる惑星も多い。しかし今回紹介した惑星は、人情を感じたり、可愛らしい動物に癒されたりと、一度は立ち寄ってみたい惑星ばかりだ。
しかしこうした星での経験は、いま私たちが住む地球でも協力し合えばできるだろう。他人に優しくするのはもちろんのこと、いつか宇宙人がやってきた(!?)ときにも、この星の人々のように優しくもてなすことができたら最高だ。