松本零士さんの代表作の1つである『銀河鉄道999』。本作は、機械の体を求める少年・星野鉄郎と、謎の美女メーテルが銀河鉄道999に乗り、さまざまな星に下車しながら謎めいた人物や生命体と出会っていく壮大なSF作品である。
本作にはたくさんの星が登場するが、全体的に悲壮感漂う場所が多く“こんな星には住みたくない”といった惑星も多い。しかし物語を読み進めていくと、実は善良な住民が多かったり、可愛らしい動物たちが登場する星もあるのだ。今回は『銀河鉄道999』から、“こんな星なら住んでもいいかも?”と思える、魅力あふれる星を紹介したい。
■人情味溢れる人たちにホロリ…「大四畳半惑星の幻想」
コミックス1巻「大四畳半惑星の幻想」、鉄郎とメーテルは昔の地球によく似た“明日の星”に到着する。しかし、そこでパスを盗まれてしまった2人。仕方なく不動産屋で紹介してもらったボロアパートに住みつつ、2週間の停車期間内に犯人捜しをすることにした。
鉄郎はそのアパートに住む足立太という漫画家の青年と仲良くなり、バイト先を紹介してもらったり、ご飯をおごってもらったりする。またアパートの大家も2人のことを案じ、食事を差し入れしてくれるなど、人情味あふれる人が次々に登場するのだ。
最終的に鉄郎とメーテルはパスを盗んだ青年を見つける。その青年にも事情があることを知った鉄郎は、バイトで買ったカップラーメンを渡し、感謝される。
その星を旅立つ時、鉄郎は“「明日の星」と呼ばれるわけが分かった”、”あの星の明日はきっとすばらしいよ、あいつ(足立)ががんばっているんだものね”と話し、メーテルも“定期が返ってこなかったほうが 私たちもしあわせだったかもね”と答えている。
明日の星は2人の長い鉄道旅において、おそらくはじめて“永住しても良い星”と思わせた惑星であった。
■ペットを失くした人なら一度は訪れたい「ミーくんの命の館」
コミックス6巻に登場する「ミーくんの命の館」という惑星は、花が咲き誇り、気候も良く、ホテルも積み木のお城でできているような美しく可愛い惑星だ。
しかしホテルの部屋を出た鉄郎は、廊下で巨大な猫やヘビに出会い、驚いて逃げ帰る。さらに夜は動物たちの鳴き声が鳴り響いており、気になって仕方ない。
メーテルが部屋にいないことに気づいた鉄郎が外を見ると、なんとそこにはたくさんの大きな動物たちに囲まれたメーテルの姿が……。慌てて銃を構える鉄郎だったが、それを制したのは列車に乗り合わせていた美しい女性だった。
女性は自分のことを「ミーくん」と名乗り、かつては人に飼われていた猫だったことを明かす。そして彼女は飼い主と死に別れた動物たちを列車で出迎え、この星に連れて来る役を引き受けていると説明した。この「ミーくんの命の館」は、主人のことを思い出して悲しく鳴くペットたちをミーくんが優しく出迎え、守っている惑星だったのだ。
ただし「ミーくんの命の館」は、どこにあるのか正確には分からない。“人の心の中にある星”というナレーションで物語は終了する。
愛するペットを失くしたあと、夜空の星を見上げペットのことを思い出したことがある人もいるだろう。もしかしたらその星こそが「ミーくんの命の館」かもしれない。ペットとの別れを経験した人であれば、誰もが一度は訪れたいと思うのではないだろうか。