『ガンダム』シリーズは、モビルスーツ(MS)を駆使した戦争を舞台にしながら、複雑な人間関係の描写もその魅力のひとつとなっている。恋愛関係もよく描かれるものの、主人公をはじめとするエースパイロットや主要キャラクターの恋物語は悲しい結末を迎えることがほとんどだ。戦争中の恋愛ということで死別するケースも少なくない。
しかし、そのような中でもしっかりと思いを遂げ、愛を成就させたカップルは複数いる。そこで今回は、苦難を乗り越えて愛を成就させたカップルを3組振り返りたい。悲恋となったキャラの一方で、幸せを掴んだのは人気キャラばかりだ。
■数々の戦争を生き抜く!不死身の男と上官カップル
まずは2007年からスタートした『機動戦士ガンダム00』シリーズに登場するパトリック・コーラサワーとカティ・マネキンを紹介しよう。
コーラサワーはAEU軍のエースパイロットだったが、演習中に主人公の刹那・F・セイエイが駆るガンダムエクシアに乱入される。このことで彼は、以降の物語で執拗に主人公側の組織であるソレスタルビーイングと相まみえることになるが、そのたび撃沈。“かませ犬”的なパイロットとしてファンの間でも人気の高いキャラクターだ。
一方、カティはAEU軍の上官であり、2人はいわば上司と部下。しかし、一目惚れしたパトリックから熱烈なアプローチを受け続け、1stシーズン、2ndシーズンとしっかり愛を育んでいき、最終的には結婚を果たす。『ガンダム』シリーズにおいて、珍しくハッピーエンドを迎えたカップルだ。
2ndシーズンでパトリックは、カティを守るために独立治安維持部隊アロウズへ志願。しかし、最終決戦にてカティをはじめとする仲間たちと一緒にクーデターを起こす。MS・ガガの特攻からカティを守り、告白。それと同時に撃墜されてしまう。ところが、直前に緊急脱出ポッドで脱出し、無事生還したのだ。
やられても決して死ぬことはなかった彼は、それまでも「不死身のコーラサワー」という称号を持っていたが、ここでは生還後に大尉に昇進するとともにカティと結婚。今度は「幸せのコーラサワー」と名乗り始めた。パトリックは作中でもコメディリリーフを務め、全体的に重たいイメージの本作で明るい印象のキャラクター。パトリックが登場するたびに和んだファンも多いのではないだろうか。
■共通の敵を討つ!陣営を超えたカップル
アムロとララァのように異なる陣営ながら理解しあった存在はいるが、恋人として愛を成就した例は少ない。しかし、運命的な出会いをして最終的に結ばれたのがOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の主人公シロー・アマダとアイナ・サハリンだ。
地球連邦軍に所属するシローとジオン軍に所属するアイナは宇宙で戦闘した後、お互いに漂流し、スペースデブリとなった戦艦で出会う。食糧や水、酸素がなく、お互い生き延びるために協力。この運命的な出会いが2人の人生を決定づけた。
それぞれ助け出された後は、地球の戦場で再会。お互いの存在を強く認め合うようになり、最終的には2人が協力し、アイナの兄であるギニアス・サハリン司令を討つ。最終局面で、アイナの世話役であるノリス・パッカードが、アイナの恋心を見抜くシーンは本作でも屈指の名シーンだ。
激戦の末、左足のヒザから下を失ったシローとアイナは、戦場を離脱。作中ではその痛ましい姿がシルエットで映され、筆者は唖然としたのを覚えている。なお、作中の公式記録では消息不明となった。
なお、後日談が描かれた『機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ラスト・リゾート』では、シローと妊娠したアイナが平和に暮らしている姿が描かれている。