スポーツ漫画は、上に立つ人間ほど品行方正なキャラが多いといえる。それは、いろんな人間をまとめるという意味で、実力だけではないものが必要となってくるからだ。才能だけでやっていけるキャラは、人付き合いに難があることもあるので、上の人間がそのカバーをしていると言ってもいいだろう。
そんな才能を持つキャラは、自由にさせられているからこそ、本能のままに力を発揮できるのかもしれない。また並外れた実力を持っているからこそ、誰も何も言えないというのも事実だ。
そこで今回はスポーツ漫画の中に登場する、遅刻しても平然としていて許されてしまうキャラとそのエピソードを紹介していきたい。
■『SLAM DUNK』仙道彰
まずは井上雄彦氏による『SLAM DUNK』(集英社)から紹介していきたい。本作で“平然と遅刻してきたキャラ”といえば、やはり仙道彰である。
仙道は陵南高校バスケ部のエースで、桜木や流川にとって一番最初の壁であり良きライバルだ。桜木や三井、宮城とは違い素行が悪いわけではないが、どこかルーズなところがあるようで、初登場がまさかの遅刻。「わりィ」と言って遅れてやってくると、監督の田岡に向かって「すいません先生 寝坊です」と正直に話す。これには鬼の田岡もあっさりと引き下がってしまった。
そして、アップをすることなくいきなり試合に参加すると、周囲の人間を黙らせてしまうプレーを披露する。パスカットとアシストで弾みをつけ、パスを囮にして豪快にダンクシュートを決めた。
さらに圧巻だったのが試合終了残り数秒で個人技だけで魅せた逆転劇。これには、読者の誰もが仙道のこれからの活躍を期待したに違いない。
仙道はその後試合に遅刻することはないので、遅刻魔というほどではなさそうだ。そこから考えると、湘北との最初の試合は練習試合だったので、まぁいいか……という程度だったのかもしれない。それはそれで舐められていることにもなるので、湘北としては屈辱的だろう。
■『アイシールド21』金剛阿含
続いては、原作:稲垣理一郎氏、作画:村田雄介氏による『アイシールド21』(集英社)の金剛阿含だ。阿含は作中で最も自分の才能を信じて疑わないキャラで、自分よりも優れた者は存在しないとまで思っている。
そこまでプライドが高くなってしまったのにも理由があり、それは幼少期からやろうとしたことがいとも簡単に出来てしまったからだ。努力をしなくても何でも出来てしまうので、凡人の考えなど理解できない……。
そんな彼は、アメフト強豪校である神龍寺ナーガに入学すると、たった2ヶ月でレギュラーメンバーに抜擢されている。そして王城との試合で初登場となったが、試合開始の時に会場に姿はなかった。
驚くことに彼は、ナンパした女性の家に転がり込んで寝ていたのだ。電話で呼び出されても慌てる様子もなく会場に向かい、その際に葉柱ルイたちに絡まれるも瞬殺。ゆっくりとベンチ入りすることになる。
しかも監督も阿含を叱ることなく、他のメンバーには「他の誰かが同じ真似しよったら 滝壺に沈んでもらう」と話す。それに他のメンバーが反発することもなく、阿含だから仕方がないか……といった雰囲気だ。それほどの実力があるからこそ、阿含が許されているのも事実。彼の個人技には誰もついていくことができないのだ。
阿含は勝ちに対する執念も凄く、先輩たちが不甲斐ないプレーをすると味方でも容赦なしである。試合の途中でも容赦なく殴りつけて退場してしまう。そんなスタイルだから、誰もが恐れてしまう存在となってしまった。
阿含は大事な試合には遅刻はしないので、自分がいなくても勝てる試合はどうでもいいと思っているのかもしれない。