■努力に勝る天才なし、芝居への練習や下準備にも余念がない
このように舞台では怖いものなしのマヤだが、この高い演技力には普段からの並々ならぬ努力があった。
コミックス3巻に登場する「たけくらべ」で、主役の美登利を演じることになったマヤ。しかし美登利が怒るシーンがうまく表現できず、千草に殴られ、怒りを表現するよう命じられる。
血が滲むほどのビンタを浴びながらも、マヤはどうしたら怒りを表現できるか真剣に考え、最後は心の底から怒りを表現できるようになる。今ではありえない指導ですら素直に受け入れ、自分の糧にしてしまうのがマヤらしい。
またコミックス9巻に登場する「奇跡の人」で、マヤはヘレン・ケラーの役に挑戦する。三重苦を抱えて生きる少女を演じるため、マヤは自分の耳に粘土を詰め、目を包帯でふさぎ、食事や遊び、睡眠もその状態でおこなう。
見えない聞こえない状態で過ごすことは多くの危険を伴うが、マヤはケガを負いながらもヘレンの状態を五感で得ていくのであった。
このようにマヤは演技のためならすべてを捧げ、その役になりきるための努力を惜しまない。天才少女と言われてはいるものの、やはりその演技力は努力の賜物と言えるだろう。
『ガラスの仮面』はときに“スポコン漫画”とも表現され、マヤの演技に没頭する姿や、月影先生の厳しい指導シーンも見ものである。また本作にはマヤを愛する芸能社長の速水真澄や、マヤの永遠のライバル姫川亜弓など、魅力的な登場人物も多い。マヤがそんな登場人物たちと時に敵対しながら、演劇の世界で成長していく姿は目が離せない。
まだまだクライマックスまでは時間がかかると言われている『ガラスの仮面』。最後の目標である“紅天女”を舞台に、マヤが次にどのような成長を見せてくれるか期待したい。