『機動戦士ガンダム』でジオン公国軍の量産型モビルスーツ(以下、MS)として登場した「ザク」。主人公側から見ると敵陣営の機体ではあるものの、その造形や各作品での目立ち方から、ファンの多いMSでもある。
ザク乗りの名セリフといえば、シャア・アズナブルの「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」「モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる」などがあまりにも有名だ。しかし、その陰に隠れているが、他のザク乗りにもかっこいい名セリフは少なくない。
1979年の『機動戦士ガンダム』の放送開始以来、同シリーズでは数多くのMSが生まれ、プラモデルなどの影響もあって各機体がファンに愛されている。本日3月9日は、「3(ザ)」と「9(ク)」の語呂合わせから、「ザクの日」としてゲームなどで毎年イベントが行われる日。今回は歴代シリーズを振り返り、ザク乗りたちの名セリフを見ていきたい。
■ノイエン・ビッターによる「天佑とはこのことか」
名言もさることながら、一つ一つの仕草や言動がかっこいい、その筆頭とも言えるザク乗りのジオン軍人が、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するノイエン・ビッター少将だ。
彼は一年戦争時は大佐として活躍をしていた人物で、敗戦後は緑色のザクIIF2型指揮官機に搭乗し、ジオンの再起に備えていた。
そして、大規模戦略である「星の屑作戦」の実行のために、残党勢力「デラーズ・フリート」のエースパイロットである“ソロモンの悪夢”アナベル・ガトーとともに、ガンダム試作2号機の乗った大型ロケットの打ち上げを守るなど、尽力する。
ガトーはビッターとシャンパンを飲み交わし、彼を「武人の鑑」だと評するが、作戦の詳細はビッターには伝えられていなかった。ガトーが「閣下、これほどにしていただきながら、我が動きをお話できず……」と謝るのに対し、彼は言葉を遮るように「それが作戦という物だ」と、一言でさっぱりと済ますのだ。
一瞬であるが、自軍を信じる気概や、どっしりとしたベテランのたくましさを感じさせるシーンだ。また、運命を受け入れる潔さや儚さもあり、少ない言葉でサラリと済ませているのが、男同士の会話らしく実にかっこいい。
基地を攻める連邦軍の旗艦・アルビオンに肉薄したビッターは、防衛する僚機の薄さに「護衛のモビルスーツは2機のみ、ふっはっは、天佑(てんゆう)とはこのことか」と笑う。
「天佑」とは、天の助けというような意味で、旗艦の防衛力の薄さにツキが回ってきたと思い発した言葉であろう。安易に「ラッキー!」だとか「ついてるぜ!」といったことを言わず、「天佑とはこのことか」と、重々しい言葉をさりげなく言うのが憎い。
結果的にはこの戦いで、主人公コウ・ウラキの一撃に貫かれ命を落とすビッター。ザクの右手を太陽に高く掲げた最期の姿だった。