漫画やアニメに登場するキャラの中には、大気や空気を操る能力者がいる。そして中には、空気の成分である酸素だけを思い通りに変化させることのできる能力者もいるのだ。
酸素を使って何をするのかといえば、濃度を上げたり下げたりすることで人体に影響を与えることができる。人間は空気を吸わなければいけない生物なので、かなり厄介な攻撃ともいえるだろう。
人間は酸素濃度が6%以下になった空気を吸い込んだ場合、一瞬で意識を失い呼吸停止状態になってしまう。それほど酸素の濃度は大事だということだ。
そこで今回は、酸素濃度を自在に変化させて戦うキャラを紹介していきたい。
■『バキ』柳龍光
まずは、板垣恵介氏による『バキ』(秋田書店)の柳龍光から。柳は死刑囚のひとりで、「猛毒柳」と恐れられていた。ロケット弾をも跳ね返す強化ガラスに囲まれた独房に幽閉されているところからも、ただ者ではないことは明らかである。
そんな脱出不可能と思えるような状況でも、柳は手のひらを真空状態にさせて強化ガラスに触れると、まるで窓ガラスのように割って脱獄してしまう。
柳が好んで標的にしたのが刃牙で、学校に忍び込み用務員を装ったうえで、暗器による奇襲を仕掛けて彼を追い詰めた。しかし、そこへ旧知の仲である渋川剛気が登場したことで状況が一変……。柳は2対1となって窮地に立たされることになった。
ところが柳には秘策があり、それが脱獄の際にも使用した「空掌」だ。「一つ質問をしよう この地球上で最も強力な毒ガスとは――何かワカるかね」……彼はそう話して刃牙に迫ると、真空状態を手のひらに作って吸わせることで彼を卒倒させてしてしまう。
この戦いを見たときには、「刃牙が息を止めていたらどうなったんだろう?」という疑問も浮かんだ……。しかし、まさか格闘技で空気を武器にするとは思わなかったし、その威力も凄まじかった。
柳はその後もいろんな格闘家と戦うことになったが、この技を利用した戦いをほとんどしていない。そこから見ても、あまり実戦向きとは言えないのかもしれない。それに、柳には暗器や「毒手」もあるので、ひとつの技に固執する必要がないともいえる。
■『ジョジョの奇妙な冒険』ウェザー・リポート
次は荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)に登場するウェザー・リポートだ。ウェザーは、第6部で徐倫の仲間になったスタンド使いで、ラスボスであるプッチ神父の双子の弟でもある。
彼が使用するスタンド「ウェザー・リポート」の能力は、天候や空気を自在に操作することができ、かなり広範囲に影響を与えてしまう。そのため使用方法を誤ると世界に影響が出るレベルでもある。
そんなスタンドの能力で空気中の酸素濃度を変化させることもでき、それによってプッチ神父のスタンド「メイド・イン・ヘブン」の攻略を果たした。実際にはウェザー本人ではなく、彼の能力を託されたエンポリオによって使用されたが……。
プッチ神父は時を加速させる能力で、相手よりも素早く動くことができる。それを逆手に取り、エンポリオは部屋の酸素濃度を上げて純度100%の酸素で部屋を満たした。酸素は生物が生きるために欠かせないものではあるが、濃度が高すぎると猛毒となる。
時間を加速させたプッチ神父は、一瞬でその毒を大量に摂取することになり、結果的に動けなくなってしまう。まさかこんな破り方があったとは!と感心するとともに、弟であるウェザーの能力に敗れてしまったのがなんとも皮肉に思える結末であった。