『SLAM DUNK』桜木花道に『アイシールド21』小早川瀬那も! “主人公の嘘”からすべてが始まった名作スポーツ漫画3選の画像
『SLAM DUNK』Blu-ray Collection VOL.1(東映ビデオ)(C)井上雄彦・アイティープランニング・東映アニメーション

「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦うことを誓います!」

 スポーツ大会の開会式でおなじみのフレーズだが、逆に“スポーツマンシップにのっとらない行為”とはなんだろうか? いろいろ思いつくが、筆者としては「嘘をつく」が、とくにダメなように感じる。“正々堂々”に真っ向から反するし、不正や反則の引き金にもなる。なにより、スポーツマンとしてはもちろん、人として嘘はよくない。

 しかし、漫画の世界ではそうとも言い切れないようだ。往年のスポーツ漫画を紐解いてみると、主人公の嘘をきっかけに物語が始まり、その嘘が大事なテーマとなる作品がいくつかある。そこで今回は、“嘘”から始まった名作スポーツ漫画を見てみよう。

■「今度は嘘じゃないっす」に感動…『SLAM DUNK』

 言わずと知れたバスケット漫画の金字塔、井上雄彦氏の『SLAM DUNK』(集英社)の主人公、桜木花道がバスケを始めたのは、彼のとある嘘がきっかけだ。

 中学時代に50人の女子にフラれ続けた花道は、高校1年の春に同学年の赤木晴子と出会い、一目で恋に落ちる。花道が一目惚れのショックで呆然としているなか、晴子は花道の背の高さや筋肉に注目し、彼に「バスケットはお好きですか?」と尋ねる。

 それに対し、花道は……

「大好きです スポーツマンですから」

 記念すべき(?)50人目の失恋相手の好きな彼がバスケ部だったこともあり、本当はバスケが大嫌いな花道。なのに「大好きです」と嘘をつき、その勢いで湘北高校バスケットボール部に入部してしまうのだ。恋のパワー、恐るべし。

 最初は晴子目当てでバスケ部に入った花道だったが、バスケに触れるにつれてその面白さに目覚めていく。インターハイ直前にはシュート練習2万本をやり抜くほどバスケにのめりこみ、“ド素人”から“チームにいなくてはならない選手”へと成長を遂げた。

 そして本作最後の試合となった山王工業高校戦。アクシデントで背中を痛めた花道は、朦朧とする意識のなか晴子の「バスケットはお好きですか?」を思い出し、こう口にする。

「大好きです 今度は嘘じゃないっす」

 始まりは不純な嘘だったのに、気づけば本当にバスケが大好きなスポーツマンになっていた花道。なんと感動的な「嘘から出た実(まこと)」だろうか。

■パシリ少年が光速のランニングバックに変装『アイシールド21』

 日本ではマイナーなアメリカンフットボールを題材にした原作:稲垣理一郎氏、作画:村田雄介氏による人気漫画『アイシールド21』も、主人公の嘘が物語のテーマになっている。

 泥門高校1年生の小早川瀬那(セナ)は、小さいころからパシリとして走り回っていたせいで、知らずして超人的な俊足を身につけていた。それに目をつけたアメフト部2年・蛭魔妖一はセナを無理やりアメフト部に入部させ、ノートルダム大学出身のランニングバック“アイシールド21”を名乗って試合に出ろと要求する。

 ただのパシリが、本場アメリカで名を馳せたスーパープレイヤーを騙るわけだ。身の丈を超えた嘘に最初は逃げ出そうとするセナだが、誰も追いつけない“光速”の走りで活躍を重ねるにつれ、アメフトに本気になっていく。

 セナの名言「強くなるんだ 嘘がホントになるように」は、虚像の“アイシールド21”を真実にしようとする彼の決意がにじみ出ている。

 1月に発売された『週刊少年ジャンプ』(集英社)2024年9号には、アイシールド21にふさわしい選手に成長したセナの数年後を描いた読み切りが掲載されている。電子コミックサイト『少年ジャンプ+』でも公開しているので、ぜひその姿を見てみてほしい。

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