■『ONE PIECE』代理原稿からブレイク!『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』

 漫画家が急病などで原稿を落とした際に掲載する読み切りを「代理原稿」略して“代原”という。2013年に『ONE PIECE』の尾田栄一郎氏が急病で休んだ時期があり、その穴埋めにとある“代原”が『ジャンプ』に載った。

 その漫画こそが、仲間りょう氏の『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』である。代原の読み切りをきっかけに連載がはじまり、そこから4年にわたって2017年まで掲載。2015年からは“巻末固定”のギャグ漫画として人気を博した。

 立派な武士を志すはずが、実際はぐだぐだに生きている磯部磯兵衛の日常を描く本作。浮世絵のような作画が特徴で、一目見ただけで「ほかの漫画とは違う」と直感させるインパクトがある。それでいて内容はダメ人間の磯兵衛が適当に毎日を過ごすゆるいギャグなので、絵柄とのギャップでつい笑ってしまうのだ。

 仲間氏のワードチョイスもうまく、印象的なセリフ回しも多い。第15話の「処す?処す?」などは連載当時、ファンの間でもよく使われていた。

 ちなみに本作はアニメ化や伊勢丹とコラボするなど、さまざまな展開を見せた作品でもある。代原からここまでの大成功を収めるとは、“浮世はつらいが夢もある”のかもしれない。

 

 個人的な意見だが『ジャンプ』の「巻末ギャグ漫画枠」はぜひ復活してほしい。ほかの漫画で熱くなった心をゆる〜い笑いで鎮めてくれるギャグ漫画でホッと一息つき、『ジャンプ』を読み終えたい気持ちがあるからだ。

 食後のデザートのような「巻末ギャグマンガ枠」。はたして復活する日はくるのだろうか。

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