『ピューと吹く!ジャガー』に『磯部磯兵衛物語』も…かつて『週刊少年ジャンプ』にあった“巻末ギャグ漫画枠”を振り返るの画像
『ピューと吹く! ジャガー』リターン・オブ・約1年ぶり 第1巻『激突! そふとくり~む!!』 [DVD](リバプール)

週刊少年ジャンプ』(集英社)の巻末を気にしたことはあるだろうか。最近では編集者が作成した企画ページや次号予告などが載っているくらいだが、「むしろ巻末が楽しみ」な時代があったことはご存じだろうか。

『ジャンプ』は、ある時期まで巻末ページに必ずギャグ漫画を掲載していた歴史がある。その作品がどんなに面白くても、掲載順は変わらず巻末のまま。いわば「巻末ギャグ漫画枠」があったのだ。なかには、巻中の連載タイトルより人気が高かった作品もあったほどである。

 今回は最近めっきりなくなってしまった「巻末ギャグ漫画枠」を盛り上げた作品をいくつか紹介しよう。

■心が落ち着くシュールギャグ『王様はロバ〜はったり帝国の逆襲〜』

 まずは、1994年から連載がはじまった、なにわ小吉氏のギャグ漫画『王様はロバ〜はったり帝国の逆襲〜』だ。『ドラゴンボール』(鳥山明氏)『SLAM DUNK』(井上雄彦氏)といった豪華連載陣で大盛り上がりの『ジャンプ』を巻末で支え続けた。

 本作は毎回10ページ未満の尺で独立したエピソードを描く、オムニバス形式のギャグ漫画だ。簡素な絵柄からくり出されるシュールなギャグは、くすりと笑えてなんだか癒される。

 連載が続くにつれてシリーズネタも増えていき、80cmだけ沈没した日本を描く「日本ちょっと沈没」や動物がゴジラのように大きくなる「〇〇ラ」シリーズなども登場。筆者としては「日本ちょっと沈没」のくだらなさがたまらなく好きだった。

『王様はロバ』は2年ほど連載を続け、単行本は全7巻出版されている。『ドラゴンボール』などの王道漫画でヒートアップした心を落ち着かせてくれる……そんなギャグ漫画だった。

■その人気、巻末どころか巻頭クラス『ピューと吹く!ジャガー』

 次は「巻末ギャグ漫画枠」で抜群の人気を誇った、うすた京介氏の『ピューと吹く!ジャガー』を紹介しよう。謎のフエ吹き男・ジャガーやミュージシャンを夢見る青年・ピヨ彦ら個性的なメンバーが珍騒動を起こしていく本作は、ギャグ漫画でありながら2000年から10年も連載を続けた。

 話数にして435話を数え、アニメ化もするなど大ヒット。ここまでくると「なぜ巻末固定だったの……?」と思ってしまうほどだ。

 本作の魅力は、なんといってもアクが強すぎるキャラクターだろう。リコーダーを吹いては奇行をくり返すジャガー、それに振り回されるピヨ彦などなど。話の意味がわからなくても、強烈な個性を持つ彼らが騒いでいるだけで面白い。

 本作で忘れてはいけないのが、講師・ハマーだ。ことあるごとに言い訳をしたり、土下座をしたりと、どうしようもないダメ人間なのになんだか憎めない。本作のキャラはクセと同じくらい愛嬌もあるのだが、その最たる例がハマーではないだろうか。

 作者のうすた氏は、『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』でも知られるギャグ漫画界の大御所だ。本物のプロには巻末も巻頭も関係ない。『ピューと吹く!ジャガー』の人気と面白さを見ると、そう思わずにいられない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3